関東合同訓練 (2)
挨拶も一区切りに元斎が咳払いする。
「御二方は関西の妖滅巫女を養成している言わば教導者」
本来なら対立している両者だが、
元斎の計らいにより関東の地で共闘を決めた。
「うちの実戦主義が優れてる事を証明する良い機会やからな!」
「基礎を築き確実な教えを身につける事こそ一人前の妖滅巫女と私は思っていますけど」
互いの方針は真逆、
故に何度も対立し両派はいつのまにか犬猿の仲となっていた。
「関西の妖滅巫女を迎えて何をするんですか?」
青井の問いこそこれからの本題。
「あと一派…東北の巫女を加え関東での合同訓練を行う」
前例の無い試み。
集結した妖滅巫女が連携し妖怪退治の教訓となるよう妖滅連合はこの計画を快諾した。
「じゃあ小百合さんや和泉さん…東北の妖滅巫女と妖怪退治を?」
興味の湧いた風花だが快く思ってないのは小百合と和泉の二人だ。
「鍛練には付き合ってあげる…でも妖怪退治を即席のチームで行うのは厳しいわね」
「右に同じくや…うちくらいなら単独行動でも平気やろ」
それではわざわざ関東に集まる意味が無いだろうと元斎は頭を抱える。
「あの…出来れば私も一人の方が」
恐る恐る手を挙げた娘伯に小百合と和泉は食いつく。
「娘伯様なら共に行動しても不足ありません」
「うちの方が足引っ張らないように気をつけんとなぁ!」
同時に手を取ると二人は睨み合いまたも喧嘩腰になってしまう。
「先に名乗りを上げたのは私の方です」
「先に手ぇ握ったのはうちやさっさと放せ!」
「いたい…」
「高貴な娘伯様を導くのは私こそ相応しく思います
和泉のような野蛮猿に務まりますか」
「何やと高飛車狐!うちの方が実戦向きな指導が出来る筈や!」
「いたい…」
「「二人とも喧嘩はやめてください!」」
堪らず青井と風花が仲裁に入って一先ず口喧嘩は収まる。
「っ…はぁ…今日は疲れました…指導の方はまた明日にしましょう」
「済まんなぁお隣のおばはんがうるさくて」
「同い年でしょう全く…近くのホテルを取ってありますので有事の際はご連絡を」
元斎に予め記したメモを渡し小百合と和泉は席を立つ。
「ではお暇させて頂きます…明日からの指導にご期待ください」
「ほなさいなら!小百合!ちいと観光に付き合ってくれへん?」
「そうね…地図も読めない和泉じゃ都会ですぐ迷子になるでしょうね」
騒がしい嵐が去り清天神社の面々は呆気に取られた。
「あの二人大丈夫かな…」
「幼少の頃から30年以上の仲らしいが大丈夫だろう」
「うへぇ…下手すりゃ俺より年上ですか…」
苦い顔をする勝一を他所に娘伯は握られた手をさすっていた。




