御山騒動 〜8合目〜
これまでの行動……
青井・風花・ハル・ヒセ…鈴芽の旅館に泊まり英気を養う…
「くはぁ!生き返る!」
屋敷の大広間。
御山の妖怪のおもてなしで椿鬼は極楽を味わっていた。
間を挟むのは右に娘伯、左にクリュウである。
「猪のお肉…初めて食べた」
イノシシ鍋は娘伯の肥えた口にも合うようだ。
クリュウの方は昔世話になった妖怪と談笑している。
「しかし…その髪で人を名乗っているのか娘伯とやら」
天狗の一人が話しかけ娘伯は不機嫌な顔になる。
「此奴は麓の結界にも阻まれてしまったんじゃよ」
「それはおかしいですね…結界は妖怪と山神様を封じる為に八百万も対象になってるのですが」
娘伯を人間と名乗るにはやはり矛盾が残る。
「誰になんと言われようと私は人間」
その表情はいつもより不安に駆られていた。
「失礼…娘伯殿にお話したい者が居るのだが」
大天狗が人型の紙を片手に尋ねてくる。
「どちら様?」
『あ!良かった娘伯さんですね!』
式神から馴染みのある声がし娘伯は驚く。
「あ!風花!そっちは大丈夫?」
『青井も一緒に銭湯でさっぱりした所です』
大天狗の説明によると二人は屋敷とは頂上を挟んで反対側の旅館に居るらしい。
自分達より好待遇な事に娘伯は安堵した。
『今は…"クラスの友達"と一緒に行動してます』
「クラスの…友達?」
心当たりがある娘伯は名前こそ思い出せないが信頼に足る者である事は理解できた。
『なので私達はこのまま頂上を目指すつもりです』
「分かった…気をつけてね」
「ん?誰と話してるんだい?」
ほろ酔い気味のクリュウは頬を染め娘伯に絡んできた。
「ねぇ風花…クラスの友達と変わってくれる?」
しばらくしてハルとヒセの声がしクリュウは驚き式神を奪い取った。
そのまま自分の座布団へ戻り話し込んでしまう。
「良かったのう御主の弟子が無事で」
「弟子じゃない…青井と風花はもう一人前」
本人達が居ればそれを否定するだろう。
「儂の"弟子"もおるんじゃ心配は無用!」
「ん…そろそろ寝る」
「そうか!儂はもう少し呑むぞ!」
賑わいに慣れない娘伯は一足先に寝室へ案内してもらう。
式神との会話も終わってクリュウは彼女の袴を掴んだ。
「んー私も眠くなってきたから一緒に寝ようよぅ」
そのまま肩を組まれ友達のように絡まれる娘伯。
「酒臭い…離れて」
介護しながら娘伯はクリュウを連れ出す。
事前に用意された布団めがけて娘伯はクリュウを乱雑に寝かす。
「ぐえ!もっと丁寧に出来ないのかい!」
「生憎…妖怪におもてなしは出来ないの」
ため息をこぼし自分も布団へ潜る。
しかし酔っ払ってかクリュウは娘伯の布団へ侵入してきた。
「眠れない…」
「いいじゃん寒いしぃ…特別に尻尾触ってもいいぞ?」
しかし娘伯は袖から小刀を取り目つきを鋭くさせる。
「ぇ…いやそんな冗談…ひゃっ!」
振りかぶった腕で小刀は天井に刺さる。
よく見れば先程と同じ式神が貫かれていた。
「盗み聞きとは感心しない…あれ?」
振り向くと娘伯はもう眠りについている。
呆れてクリュウは元の布団に戻ろうとしたが、
いつの間にか掴まれている尻尾のせいでそれも叶わなかった……。




