御山騒動 〜2合目〜
これまでの行動…
青井・風花…御山へ入り結界の1つを破壊。
娘伯・椿鬼…御山外縁を散策、娘伯は先導し椿鬼は休憩中。
「ん…?」
しばらく歩いて川の中流へ着いた。
玉砂利が広がり川を隔てて別の山が伺える。
その中で大きな岩に腰掛け何か食べてる人を見つけた。
ゆっくり近づくと向こうの女性も娘伯に気付いたようだ。
「なんだあんた?ここらで迷子か?」
片脚にタイツを履き服装はどことなく和風に見える。
胸はサラシを巻いてない娘伯と同等か、長い髪は青白く銀髪にも見える。
首輪と鈴、何より頭から生えた長い獣耳と八つに分かれているフサフサの尻尾が人ではない証を見せつけていた。
「貴女…何者?」
「これはとんだご挨拶だね
神社なら向こうにあるから帰りなよ…巫女さん」
互いに素性が知れず緊張感が増す。
「悪いけど妖怪を見過ごす訳にはいかない」
小刀を構えて臨戦態勢になる娘伯。
「止してくれよ…私は人間と争う気は無いんだけどなぁ」
団子の串を懐に納めると代わりに鉄製の扇子を取り出し立ち上がる女。
「悪い事は言わない…早く此処から立ち去るんだな」
「私は依頼で此処に来てる…帰る訳にはいかない」
先に飛び出したのは娘伯の方だ。
昼間である為に韋駄天は活かせないが素早く間合いを詰めようと試みる。
「やめてくれ…よ!」
小手調べか女は火の玉を放つ。
しかし娘伯は霊刀をもって一閃していく。
「あれ?鈴が鳴らない?あんた人間じゃないのかい?」
意味不明な言葉に構わず女に斬りかかる娘伯。
女は頭上を飛び越え霊刀を避けてみせた。
「お生憎様…私は人間」
「細かい事は気にしなくていいってか…なら遠慮なく!」
着地すると女は扇子から炎の刃を生成する。
娘伯も小刀から霊刀を繰り出し女目掛けて飛び出す。
「はあぁ!」
「っ…!」
霊力と妖力の刃が交わし相殺される。
次に響いたのは小刀と鉄扇の甲高い金属音。
互いの剣戟は弾かれ再び距離を取る。
「次で決めてあげるよ…」
「……」
女の鉄扇が開かれシャリンと擦れる音から静寂が生まれる。
2人が半歩踏み込みそして一気に間合いを詰めた。
「そこまでじゃ!」
間に椿鬼が降り立ち怒号が場を支配する。
本気で振るった両者の手を鬼の剛腕で受け止める。
「「椿鬼!……ぇ?」」
娘伯と女の声はハモり気まずい空気が流れる。
互いに椿鬼の事を知っている事に驚いたようだ。
「全く…儂が昼寝してる間に何無益な争いをしておる…クリュウ」
「旧友への挨拶がそれかい?椿鬼」
鉄扇を納めクリュウと呼ばれた妖狐は軽口を叩く。
「なに…椿鬼の仲間?」
「そう言うあんたは椿鬼の何なんだ?」
娘伯も小刀をしまう代わりに何とも言えない表情で対抗した。
「あ〜此奴は妖滅巫女の娘伯じゃ
儂は娘伯の神社で居候しておる」
「…その名前…その髪…あ!あんた学校に居た教師か!」
いつの話だったかと娘伯は上の空で思い出そうとする。
「体育教師だよ!あの時はよくも罠を仕掛けてくれたね!」
「あぁ…あの時の」
天青高校でただ一度だけ合間見えた体育教師をやっと思い出した。




