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巫女乃禄  作者: 若猫老狐
御山騒動
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【11】御山騒動 〜序〜

世間が冬休みと言われる頃。

寒さの訪れた清天神社にそれは関係ない事だと思われていた。

悩める学生はゆっくりと石段を上っている。

「そろそろさ…私達も進路をハッキリしなきゃいけないと思うの」

陽の出る時間帯にこれと言って仕事が無い青井はそう切り出した。

「え?まだ一年あるのに?」

「もう一年しか無いの!私達の学校生活!」

呑気な風花の返事に青井は唸った。


清天神社のバイト巫女として始まった2年はいつの間にか一般人である青井と風花を妖滅巫女見習いにまで成長させた。

そして今、残った一年をどう過ごすか青井は真剣に悩んでいるのである。

「これからも妖怪退治をするのか…それとも"日常"に戻るのか」


「んーなるようにしかならないんじゃないかな」

既に妖怪が当たり前になった日常で妖怪退治を辞める事に風花は反対する。

そのふんわりとした答えに青井はこれ以上の議論は無駄だと悟る。

「もういい…後で他の人に相談する」

そう言って青井は石段を上りきった。


「こんにちはー」

社務所に入りいの一番に進路の相談をしようと考えていた。

しかしいつもと違う緊張した空間に青井は言葉を躊躇ってしまう。

『お待ちしておりました』

妖滅連合の遣いがちゃぶ台の前で寛いでいた。

しかし正座の娘伯と元斎は既に依頼を聞いたのか冷や汗を垂らしている。


『既に彼らには話したのですが…』

「ダメ!今回は危険過ぎる!」

珍しく娘伯が叫んだ。

それほど今回の依頼は類を見ない危険度だ。

「娘伯や…落ち着けまずは話をしてからでも遅くはない」

「そんな神妙な顔して重要なお話しなんですか?」

『えぇ今回の依頼はとても面倒な事でして…なるべく人手が欲しいのです』

そう切り出すと遣いは狐面を動じる事なく説明する。

『御山と言う関東の山に住まう山神、これを救い出して頂きたい』


突然神の名を出されきょとんとしてしまう巫女見習い。

「山神…様を助けるだけ?」

『状況はかなり混乱しています

妖怪が縄張り争いを起こし御山を占拠してしまったのです』

その中から山神を救い出す、前例の無い依頼に娘伯もたじろいでいた。

「何が起きるか分からない山で二人を前線に繰り出すなんて危険すぎる…私だけで」

娘伯一人で山の大群を相手にする、

結果は火を見るより明らかだと元斎は言う。


「私達も居ればなんとかなるんですね?」

風花の加勢に青井は嫌な予感がした。

行き当たりばったりな彼女の行動は当然トラブルも免れない。

「ダメだよ…娘伯さんも危険だって言ってるのに…」

「青井!私達は一人じゃ半人前にも及ばないけど…二人ならなんとかなるかもしれない!」

一瞬の不安を払い青井を奮い立たせる言葉。

迫られて首を横に振る訳にもいかず青井は重く頷いた。


「勿論万全の準備はしよう

だが現場の判断は各自に任せる」

元斎の承諾で妖滅巫女は決意を固める。

『では改めて御山の状況を説明しましょう』

遣いは御山の地図をちゃぶ台に広げる。

麓を丸で囲み山神が居ると思われる社に印をつける。

『御山には元々住んでいる妖怪が居ます』

御山妖怪は山神を護衛していたが現在は分断され各所で戦闘を繰り広げているらしい。


『相手は…都会から湧き出た妖怪…頭領の名は顔石と言います』

「な!ん!じゃ!と!」

突然個室の襖が開き青井と風花はビックリした。

「椿鬼!面倒だから出てこないでって言ったでしょ!」

「昔馴染みの名を出されてじっとしていられるか!」

しかし遣いは椿鬼の事を知ってたかのように動じない。

『彼女の事は友好的な妖怪として報告を受けております

もしよろしければ彼女も加勢させてみては?』


思わぬ提案に驚いたのは元斎の方だった。

「良いのか?妖怪同士の争いに妖怪を投じるなど聞いた事がない」

『他地方からの応援は望めません

今は人手が欲しいのではありませんか?』

尤もな意見に結局黙ってしまう。

『では明日同じ時間に伺います

御山の麓までは私の車で案内致します』


ではこれにて、と遣いは社務所を出る。

仕方ないと元斎も社務所を出て準備の為にどこかへ出かけてしまう。

「青井そう言えば」

「…今その話はやめておこう」

結局青井は進路相談をうやむやにして明日に望んだ……。

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