【10】鬼の昔話
「はぁ〜さむっ」
手袋とマフラーの重装備で風花は下校の道を歩いていた。
部活は無かったが青井が珍しい補修により今日は一人で帰宅だ。
「……あ!椿鬼さん!」
いつもと変わらない格好と我が物顔で椿鬼を見つけた。
「む?おぉ風花か今日は一人かの?」
椿鬼も風花に気付いて腕を振り上げる。
「あれ?その手に持ってるのは?」
盃を持ってる方とは逆の手を指差す風花。
『いや〜ご一緒してるっす』
聞き覚えのある声と共に提灯から舌が生えた。
「チョウじゃよ今日はちょいと付き合ってもらっておる」
「元斎さんに怒られないんですか?」
無用な心配とばかりにニッと笑みを見せる。
「普段から蔵におるんじゃしバレないじゃろ
所でどうじゃ?ちょいと寄り道してみぬか?」
山鬼討伐の礼がまだだったと思えば断る訳にはいかない。
「振っても何も出ませんよ?」
「構わんよ」
仕方ないので風花は椿鬼とチョウに続いてある場所へ向かった……。
「着いたぞここじゃ」
暖簾に"鳥"と書かれた屋台。
既に常連となった大将の焼き鳥屋だ。
先客も居なく椿鬼は真ん中、風花は左の席へ座る。
「よぉ大将!とりあえず一杯良いか?」
「やぁ姐さん!子供には呑ますんじゃあないぜ?」
「こ…子供じゃないです!風花です!」
2人からすれば風花は子供だろうが構わず大将は椿鬼の盃に酒を注ぐ。
「此奴は娘伯の手伝いをしておる風花じゃ
儂のおごりじゃ何でも食え」
「おうそうかいよろしくな!因みに一押しは…」
大将が喋ってる最中だが風花は椿鬼の方を向き頭を下げる。
「山鬼の時はありがとうございました!」
既に焼き鳥を食べ始めている椿鬼は目を点にした。
「お?おぉあの時じゃな…礼には及ばんよ
儂"等"はただこの好きな都会を守りたいと思っただけじゃ」
要領を掴めてない表情で焼き鳥を頬張る椿鬼。
「あの…同じ妖怪を倒して思う所は無いんですか?」
ふと出た疑問に椿鬼はどこか見上げる。
「むーこの時代に知り合いなど…まぁ彼奴らくらいか」
『姐さんの昔の話…気になるっす』
チョウからの催促も受けそれではと椿鬼は昔を思い起こした。
「儂は今で言う平安の頃に生まれた
山を彷徨ってる所を酒呑童子に目をつけられたのじゃ」
意気投合し"ヤンチャ"を多くしでかしたと椿鬼は語る。
「しかし人による罰を受け酒呑は一人逝った
それからの儂は波乱の連続じゃ」
人に雇われ同じ妖怪と闘い江戸で妖怪を匿う長屋でひっそり暮らし、
そして明治に入った頃に椿鬼達は現代へ来た。
「本当なら過去へ行き柵の無い世を生きようと画策しておった…じゃが何の手違いか未来へ来てしまった」
「後悔とか残念な気持ちは無いんです?」
風花が問うと椿鬼は微笑し酒を煽る。
「昔以上に縛りの無いこの世を後悔しろと?」
それ程江戸や明治で過ごした時間は辛いものだったのかと風花は呟く。
「ふむ…では儂等がどう現代へ来たか話そうかのう」
続けて椿鬼は明治での出来事を思い出していった……。




