人として、巫女として (6)
「元斎さん達が罠を仕掛けたのはこことここと…」
地図に妖怪探査の札と罠の目印を付け手近な目標へ向かう2人。
光る御札の一枚は大通りのすぐ近くだ。
「娘伯さん来てくれるかな?」
風花が訊ねるが青井は黙って走り続ける。
遠くで爆発音が聞こえ妖怪が暴れている事が解った。
「早く全部倒さないと…!」
十字路を曲がると警察が避難誘導している。
「君達!危ないから離れなさい!」
パトカーで道は遮られているが青井達は構わず押し通そうと試みる。
「ここは私達に任せてください」
「ふざけている場合じゃ…うわ!?」
すぐ側まで山鬼が迫りパトカーを吹き飛ばす。
青井が素早く霊的空気銃を抜き膝へ1発撃ち込んだ。
「たあぁ!」
ぐらついた山鬼目掛けて風花の大幣がしなる。
顔にめり込み山鬼はあっさり地へ崩れた。
「あれは…君達は一体…?」
唖然とする警察を余所目に青井と風花は次の地点へ急ぐ。
「居た!罠に掛かってる!」
足元に置かれた電撃の御札で山鬼は膝をついていた。
青井は正確に数発頭へ霊的空気銃を放つ。
「ぐおあ!」
球の爆発で山鬼は倒れる。
「球の補充しなきゃ…」
回転弾倉を開き小さな球を詰めていく。
「みぃつけた!」
突然後ろから山鬼が現れた。
振り下ろされた拳に風花は大幣で防ぐ。
大きく火花を散らして先に吹き飛ばされたのは山鬼の腕だ。
「どりゃあ!」
大幣の連撃に山鬼の身体に傷が生まれそして地に伏せる。
「風花!大丈夫?」
「腕痺れそう…山鬼はあと何体…」
光る御札はまだ10枚以上残っている。
しかしその幾つかが光を失くしているのに風花は気付く。
「良かった…娘伯さんも加勢してくれたんだ」
「でもこれ…来た道と真逆の方向だし…2ヶ所で反応が消えてる」
青井達の居る地点を挟んだ区画で御札の反応は消えている。
「きっと椿鬼さんも助けてくれてるんだよ!私達も頑張ろう!」
疑問は残るが2人はまた別の場所を目指す。
山鬼が大通りから裏道へ入ろうとした所を見つける。
「逃がしません!」
霊的空気銃を構え青井が先行し風花も続く。
行き止まりに当たった山鬼は振り返り青井達に気付く。
「白い巫女は居ないか」
山鬼はぶつぶつと呟く。
確実に当てる為に青井がゆっくり近づいたその時だ。
「っ!危ない!」
脇道から新たな山鬼が青井を狙ってきた。
風花が飛び込み青井を押しのけるが、
豪腕に身体を打たれ壁に衝突する。
「これで仕舞いだ巫女共!」
さらに来た道から山鬼が退路を塞ぐ。
青井が構えるより早く前方の山鬼は拳を振り上げていた。
間に合わないと悟った青井達に風がそよぎ、
そして山鬼の豪腕が斬り飛ばされる。
上空から娘伯が落ちる勢いのまま小刀を振り下ろしたのだ。
「白い巫女…ぁ!」
ポニーテールが弧を描き霊刀が山鬼の首を斬った。
山鬼が倒れるより速く娘伯は振り返り風花の方へ走る。
不意打ちした山鬼が風花に迫るが娘伯は飛び越え退路を塞いでる山鬼を捉える。
「なんだと…ぐあ!」
風花を狙う山鬼は霊的空気銃の掃射で餌食に、
逃亡を図ろうとする山鬼は小刀によって地に伏した。
「風花…青井…遅れてごめんなさい」
小刀を納め怪我した風花へ駆け寄る娘伯。
「娘伯さん…来てくれて良かった…」
「安心するのはまだ早い…治癒の御札は?」
「えっと…これですね」
一枚の御札を風花の患部に貼り霊力を込める。
本来なら数分掛かる治癒だが一瞬で風花の傷は塞がった。
「いてて!…ぁ…娘伯さん…ありがとうございます」
「風花はここでじっとして…青井残りの山鬼は」
いつもの凛とした表情の娘伯に青井も風花も気力を取り戻す。
「残りは……反応があるのは5つです」
「解った…案内してくれる?」
青井が先導し娘伯も裏道から出る。
見送った風花は頬を叩きゆっくりとだが立ち上がる。
「私だって妖滅巫女の端くれなんだから!」
ふらふらとした足取りで風花も裏道を出て行った……。




