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巫女乃禄  作者: 若猫老狐
バイト巫女、参戦
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雪の調べ (4)

「もうちょっとだけ貰っちゃおうかしら」

「やめ…んん!」

拒絶する術も持たない娘伯にユキメの妖力が襲う。

身体の内から氷漬けにされていく感覚に娘伯はついに気を失ってしまった。

「あら?やりすぎちゃったかしら?」

反応が無ければ楽しめないとユキメは娘伯から離れる。

「どうしようかしら…目が覚めたら解放して…」


不意に大きな力を感じユキメは振り返る。

磔にされてた筈の娘伯が氷を溶かしゆらりと佇んでいるのだ。

「どうして…ついさっきまで眠ってた筈じゃ」

瞬きの一つで娘伯はユキメと間合いを詰めていた。

小さな拳から放たれた霊力を纏った一撃でユキメは屋敷の壁に叩きつけられる。

「な…」

呆気に取られるユキメを逃すまいと娘伯はまた距離を詰め首根っこを掴む。

『依代になんて酷い事するかな』


娘伯とは違う響く声。

まるで別の化け物と対峙してるようで、

ユキメは死の恐怖を感じた。

「貴女は…いったいだれ…」

『僕は…』

ふっと掴んでた手が緩みそのまま娘伯は地へ倒れてしまう。

力を使い果たしたのか娘伯はもう先程と同じ眠り顔を晒している。

「…ふふ…なんだか解らないけど面白い子ね…娘伯ちゃん」

ここで彼女を終わらせるには惜しいとユキメは子を見守る母の顔でそう呟いた……。



「それで…娘伯さんはその後どうなったんですか?」

氷漬けのまま宙を漂いながら風花が訊ねる。

ユキメは青井と風花の案内で清天神社へ向かっていた。

「眠ってる内に山の麓へ帰してあげたわ…雪見草と一緒にね」

今のユキメは大人になった娘伯を見たい気持ちでいっぱいだ。


「娘伯ちゃんは元気にしてる?病気になったりしてない?」

「私達もずっと一緒に居る訳じゃないので…まぁ元気ですよ」

青井が答える。

それよりも気になったのは娘伯の不可思議な覚醒だ。

「私にも解らないわよ?悪戯が過ぎたと思ってあの時は反省したわ」

娘伯の人並み外れた力は見てきたが、

小刀や御札も無しに妖怪を追い詰めるのは見た事が無い。


「本人に訊いてみるのが一番早いかしら?」

軽やかに石段を登り素朴な提案をしてみるユキメ。

「あとは…元斎さんかなぁ」

まだ隠し事があるのではと考えていた。

何かの機会にそれが打ち明けられればと青井は模索している。

「あっそうだ貴方達に雪見草あげるわね」

ユキメは懐から雑草を扱うかのように雪見草を取り出す。

「え!私達ボロ負けだったけどいいんですか!」


「私を倒す事が目的では無いでしょう?

それに…そこそこ素質もあったし」

ユキメは風花が最後に放った幣の一撃から人間の霊力を感じ取っていた。

元斎の特訓で霊力行使の兆しが見えてきたようだ。

「前途多難な道だと思うけれど…娘伯ちゃんをよろしく頼むわね」

一妖怪にそう言われるのは複雑な気分だが風花と青井は妖滅巫女の責任を肝に銘じる。


鳥居をくぐってユキメは2人を拘束する氷を無造作に地べたへ置いた。

「さぁてと…10年ぶりの再会になるかしら?」

「ちょ…私達はどうなるんですか!?」

「しばらくしたら溶けるわよ」

目もくれずユキメは意気揚々と社務所へ走る。

放置される風花と青井の傍には一本の雪見草が風に揺られていた……。

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