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巫女乃禄  作者: 若猫老狐
それから2年……
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巫女乃禄 (2)

今の"自分"は何者だと改めて自問する。

結論は既に決しているのに受け入れる覚悟が足りない。

心の弱さが頬を伝う。

「娘伯さん!」

何度も聞いた自分を慕ってくれる声。

青井の叫びに"彼女"は瞳を見開く。


「私は…!」

倒れかかった足を踏ん張り何とか体勢を整える。

痛みを感じない身体は既に再生していた。

自らに敵意を示す妖滅巫女…美剣を前に目つきを尖らせる。

「……発する気が変わった」

美剣も相対する者の変化に応じ武具を構え直す。


「これを!」

青井が投げたのは鞘に収まる小刀。

二年前の別れに託したそれは今また"彼女"の手に渡る。

鞘から抜くと刀身は昔と変わらない輝きを放っていた。

「生きて…戦うしか…!」

「っ!」


ほんの一瞬で互いの間合いは刀身の届く程に近づいた。

先に武具を振るったのは美剣、

軌道が変わらなければ"彼女"の首を両断される。

しかし"彼女"は肘で受け肩まで抉れる。

瞬時に再生し美剣の武具を拘束すると、

残った右手で小刀を握り締め一閃を走らせた。


「……」

小刀は美剣の首ギリギリで止まっていた。

「これで…おしまい…」

「負けた…超常の力…人では及ばないと実感できた」

"彼女"が小刀を収めると刺さっている武具を抜き美剣に返す。


「……もう記憶はとっくの前に取り戻していた」

ぽつりと彼女が呟き青井は驚愕する。

「それじゃあ…」

「大きくなったね…青井」

"娘伯"はやっと変わらない笑みを青井に見せた。

感情が抑えきれず大粒の涙を流しながら青井は娘伯を抱きしめる。

二人の背丈は殆ど同じだった。


「青井殿…童心のように振る舞うのは良いが…」

「感動の再会って所だけどゆるりと過ごせないんだな」

蚊帳の外だった美剣と道我が一言申す。

「私を頼るのは…これで最後に」

唯一の望みはそれだけだ。

「心苦しいのは分かります…でも風花を助ける為なんです」


道我から此処までの経緯を知る娘伯。

地上で暴れる衣蛸のキヌを滅する事が最終目標だ。

「道我はキヌを滅しても構わないの?」

「いいさ…これが終わったら俺も彼女の後を追うつもりだ」

諦めか覚悟か道我の表情は沈んでいる。

「だから見届けさせてくれ…君の最後の戦いを」


娘伯は重く頷く。

「まずは此処から脱出しなければな…」

しかし部屋を出れば妖怪の群れが待ち構えている。

生半可な勢いで突破出来るとは思えない。

「先導は任せて」

扉の前へ娘伯が立つ。


「しかし此処で娘伯殿の体力を消耗させたら地上での決戦に障るのでは…」

「だいじょぶ……私は死なない」

「娘伯さんだけに無理はさせません…なるべく私達も援護します」

美剣と青井が武具を構える。

「よーし…じゃあ派手にやってくれ!」

道我がロックを解除しゆっくりと扉が開く。


直後、扉の先から腕が伸び娘伯の頭を掴む。

「娘伯さん!?」

青井が手を伸ばすより早く妖怪によって娘伯は闇へ引き摺り込まれた。

驚愕する間も無く群れは次の標的を捉える。

「理性を失くした奴らが…まるで獣だな」

呑気に欠伸を垂れる道我だが妖怪は部屋の中へ入ろうとしてくる。


美剣が"霊力一体型剣銃"の引き金に指をかけた時、

群れの中から異変は起こる。

「この程度…」

小刀の煌めきが走ったかと思えば群れの殆どが両断されたのだ。

残った妖怪も振り返る隙に青井と美剣の手で葬られる。


「前のように妖術は扱えなくなっても戦力は健在かぁ」

一瞬で終わった戦闘に道我がため息をこぼす。

「早く外へ案内して」

「あぁ…だけど元来た道は危険かもしれないから遠回りをしよう」

残存する妖怪がどれ程か分からないが、

騒ぎを立てたならそれに誘き寄せられるのが獣である。

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