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巫女乃禄  作者: 若猫老狐
それから2年……
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新世代の巫女 (5)

「牙谷!合わせろ!」

「分かってるって!」

青井達の後方から美剣と牙谷が駆けつけた。

左右に分かれるとそれぞれ霊銃を衣蛸へ連射する。

「囮はやられたようね…」

半分は蛸脚で捌くが防ぎきれない弾丸は僅かに身体を掠める。


「扇木!」

「は…はい!」

傘霊扇を扇形態にし振り下ろす。

強大な風が巻き起こり毒霧を衣蛸の方へ押し返す。

衣蛸は弾丸の雨に晒されながら毒霧の中へ姿を消した。


「今のうちに撤退…牙谷は風花を頼む」

「重…いや!意外と軽いな!」

牙谷は風花を背負うと痩せ我慢を言い放つ。

扇木は地面に刺さった薙刀を回収、

脚を動かせない青井を美剣が肩を貸し衣蛸から離れる。


「逃がすと……っ!?」

毒霧から頭を覗かせた衣蛸が妖滅巫女より遠くの何かに気付く。

全ての蛸脚を防御に回すとそれを全て払う弾丸が奔った。

『防がれた!?』

真央が珍しく驚きの声を上げる。


「撤退が優先だ!急げ!」

衣蛸に生じた隙に深追いする事なく美剣達は大通りを後にする。

残されたのは脚を失った衣蛸だけだ。

「治癒が必要ね…道我は居ないし自力で頑張るしかないわ」

衣蛸は毒霧に包まれながらそう愚痴を吐いた……。



「ごめんなさい皆さん…私達が無理をしたせいで迷惑を…」

清天神社の宿舎へ帰還した妖滅巫女達は風花の容態に深刻な顔を浮かべる。

「いえ…もし私達が先行していたら毒に気付かず全滅してました」

「怪我の功名ってやつだな!」


幸いにも青井の怪我は治癒札でなんとかなる程だ。

しかし牙谷の高笑いに誰も応えない。

それほどに風花が受けた毒は厄介な物だった。

「治癒札を持ってしても完治出来ないなんて…」

霊力を込め続ける扇木も疲れを見せ始める。


「もう…私の事はいいから…」

弱々しい風花の声より青井が張り詰めた怒号を上げる。

「こんな事で諦めるなんて風花らしくない!」

青井も治癒札に霊力を送る。

雀の涙でも風花には大きな励ましに思えた。


「でもこれからどうするのさ?毒をばら撒かれたらウチらじゃ近づけないよ」

「真央の狙撃すら凌ぐ妖怪だ…まともに戦えばこちらが消耗するだけ」

打つ手無しと諦めかけた時、

宿舎の入り口から男の声がする。

『何やらお悩みのようですね?』


「む…妖滅連合の遣いか…今は取り込み中なのだが」

『その取り込みを解決できるかもしれない策があるのですが…客人を入れても構いませんか?』

いつになく険しい雰囲気を漂わせているが断る訳にもいかない。

「分かった…その客人とやらをこちらへ」

美剣の承諾に頷くと遣いは入り口で待っていた人物に手招きする。


「いやぁ話が早くて有難いねぇ」

「「なっ!?」」

その姿に一同は驚愕した。

後頭部の突き出た人型の妖怪…ぬらりひょんである。

『こちらは…』

「何故妖怪を此処に!」


青井と風花を除いて妖滅巫女が構える。

予測できた事態にぬらりひょんは両手を上げ無抵抗を示す。

「無事警戒してくれてありがたい…これくらいの距離感の方が接しやすいだろ?」

「妖滅巫女の拠点に乗り込んで随分な態度だな!」

牙谷は今にも飛びかかり八つ裂きにしそうな程にイラついている。


「ま…待ってください!せめて話は聞いた方が…」

青井が間に入り巫女達に落ち着くよう説く。

『そうですよ…彼こそがこの窮地を脱する鍵を握ってますから』

遣いの方は普段と変わらぬ口調で至って冷静だ。


僅かに静寂が訪れ妖滅巫女に動きが出る。

最初に武具を納めたのは扇木と真央、

「今の私達では…手に負えません」

「癪だけど仕方ないね」

二人に諭されるように美剣も武具を下げる。

「……妖しい動きをすればその場で斬る」


牙谷だけは"銃剣付短機関霊銃"を震わせながらぬらりひょんを睨みつける。

「隊長命令だ…牙谷!」

「ぐぬ…っ!」

「あーもう良いよそれ構えたままでも」

ぬらりひょんは諦めた様子でため息をつく。

かくして銃口を向けられたままに妖怪と巫女の対談が始まった。

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