雪の調べ (2)
「少し落ち着いたかしら?」
「ん…」
正座してた娘伯は女の子座りになり緊張がほぐれたのかとユキメは思う。
「ここはね人は滅多に来ないのよ?
娘伯ちゃんみたいな小さな子が訪れるなんて初めてなんだから」
ユキメはそっと娘伯の側に寄る。
娘伯も身構えるでもなく部屋を見渡すだけだ。
「だからちょっと…人肌が恋しくなるのよね…」
じっと見つめる娘伯に気付く。
しばしばユキメもその綺麗な琥珀色の瞳に見とれていた。
「ねぇ娘伯ちゃ…ひゃ!」
娘伯の小さな手のひらで頬を撫でられた。
突然の行動にユキメは可愛く悲鳴をあげてしまう。
「…あったかい」
白い肌は生気を感じさせないが娘伯はそう感じた。
ずっと触られてユキメは顔を溶かしてしまいそうな程赤くなっている。
「伯父の手よりあったかい」
「お…おじ?」
そろそろ手は放してほしいと思ったがユキメは聞き返す。
「伯父いつも厳しい…私はいつも叱られる」
妖怪退治は甘くない、
なんだその素振りは、
妖怪を怖気付かせる覚悟で掛かれ、
元斎の言葉はきつくどんな時でも思い出してしまう。
「手は冷たいけど…それでも私は伯父が好き」
「へえ〜それはどうしてかしら?」
うんと悩んでも一番しっくり来る言葉は出ないが、
「いつも…一緒だから」
ふっと出た理由で今は十分なのだ。
「そう…良い人じゃない」
「…ん」
ユキメの笑みに娘伯はこくりと頷いた。
外は吹雪いているのに屋敷の中は静かな時間が流れている。
気付けば娘伯はユキメに膝枕をしてもらい眠たげな表情だ。
「ねぇ娘伯ちゃん…貴女って」
「んぅ……」
一目見てからずっと気になっていた事を問うユキメ。
しかしもう夢の中へ入ってしまった娘伯に声は届いていない。
「あら…ふふ…おやすみなさい」
ユキメは初めて母性に目覚め笑顔を見せた……。
「なーんて事があったよの?娘伯ちゃん可愛くない?」
そして現在、同じ場所。
ユキメはそんな思い出話を青井と風花にひけらかしていた。
「な…なんでこんな事に…」
氷の塊に拘束され風花は情けない声を出す。
「風花がうっかり娘伯さんの名前出すからでしょ…」
同じく拘束された青井も愚痴をこぼす。
彼女達も幼い娘伯同様に妖滅巫女の認定試験を受けこの山を訪れた。
そして娘伯と同じようにこの屋敷が現れユキメが出迎えてくれた。
しかし風花は面妖な彼女を妖怪と断定し攻撃を仕掛けてしまった。
「まさか娘伯ちゃんと同じ妖滅巫女の見習いとはねぇ」
2人が巫女装束を着てる時点で勘付いてたユキメ。
自らの庭でヘマをする事はなく、
ユキメを相手に風花と青井は完敗してしまったのだ。
「命は大事にしなきゃダメよ?」
小鼻をつつかれ風花は悔しさでいっぱいになる。
「それで…私達はこれから死んじゃうんですか?」
青井が訊ねるとユキメは悪戯を思いついた笑みで答える。
「普通なら氷漬けにするとこだけど…娘伯ちゃんの友達なら特別お家に帰してあげる」
倒すべき妖怪に情けをかけられ複雑な心境の2人。
「でも道中暇でしょう?さっきのお話の続きをしてあげるわ」
まるで昨日の出来事のようにユキメは娘伯との出会いを思い出した……。




