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巫女乃禄  作者: 若猫老狐
白と黒
141/182

関西御前試合〜決勝〜 (2)

「う…ぐぐっ…」

黒刃の紅い瞳が娘伯へ向けられる。

試合には相応しくない殺意を持って睨みつけていた。

「ツクヨミ…ありえないってどういう事…」

じわりと下がり娘伯は訊ねる。

『それは……』

しかし答えを出す前に黒刃が動き出す。


御札から発せられた力は黒い刃となって結界の天井を突き破った。

「何なのあの力は!」

「おいおいおい!ありゃまずいで!」

小百合と和泉が立ち上がるより早く黒刃は叫ぶ。

「娘伯ー!!」

振り下ろされた黒い塊はゆっくりと娘伯へ振り下ろされる。


避けられない事を悟り娘伯は目を見開く。

「クロ……」

頭部へ当たる直前にそれは消えた。

御札が負荷に耐えきれず焼き切れたのだ。

「ぁ……」

黒刃は糸の切れた人形のように力なく倒れる。

観客席はしんと静まり返ったがウェンフーが立ち上がったと同時にアナウンスが入る。

『勝負あり!勝者…娘伯!』


観客席からはドッと歓声が上がった。

人の成せない技から現実逃避してるようでもある。

「は…楽しませてもらったぞ…白巫女」

ウェンフーが裂けた結界から戦場へ侵入し一瞥する。

「八尾狐!」

懐から小刀を構えるが無勢だと察していた。

「妖滅巫女の真っ只中に!」

「ヤロ!覚悟出来てんやろな!」

「いいのか?万全でないお前たちをなぶり殺しにするなどいつでも出来たんだぞ?」


「これ…まずくない?」

「今の私達は武具を持ってない…」

観客席の風花達も稲荷と八幡の巫女も手を出せない。

さらに事態は悪く傾く。

会場の天井が破壊され上から厄狼と犬魔が降ってくる。

「さぁどうする?このまま俺達を帰すか…勝ち目の無い延長戦に挑むか…」


「貴方達は客人…今回だけは悔しいけど見逃す」

「娘伯様!」

「血走って来るかと思ったが…厄狼」

ウェンフーは指示を出し厄狼が倒れた黒刃を抱える。

一瞬厄狼は娘伯へ視線を向けたが、

「次は都会で会えるといいな妖滅巫女!」

マトが最後に捨て台詞を吐き破った天井から外へ出る。


「追え!絶対にが…」

「やめなさい和泉…損害を増やすだけよ」

既に諦めた小百合と拳を叩く和泉。

兎に角これで御前試合は終わりを告げた。

「娘伯様…優勝おめでとうございます」

「ん…」

「表彰式はこの後行いますのでお待ち下さい」

「ん…」


小百合と和泉が準備をしに離れると青井達が降りてきた。

「「おめでとうございます娘伯さん!」」

「ん…ありがと」

「最後はどうなるかと…焦った」

『お見事でした』

アイサとアイカからも褒められ娘伯は照れる。


黒刃が最後に繰り出した大技、

常人を超えた力にツクヨミは狼狽えていた。

「ねぇツクヨミ…さっき言ってた事…」

『あぁ…そうだね…今教えても理解出来ないだろうけど…』

念を押し咳払いするツクヨミ。

『"アレ"が使っていたのは僕と同じ力だ』

「ツクヨミと同じ力?」


当然娘伯には理解出来なかった。

しかしアイサから一つの推測を受ける。

「娘伯に話さなかった秘策…実際に有効だった」

特に娘伯が試合を見なかった事で予知のような動きを封じれたのは大きい収穫。

「うーん娘伯さんを模して造られたなら…ツクヨミさんも模してるんじゃ?」

風花からも考え無しの意見が飛ぶがツクヨミは激昂した。


『そんな事ありえない…八百万の力は唯一無二!ましてや三貴神を模すなんて』

「でも祭神は全国複数にありますよね?」

『都会とは別の場所に居るツクヨミ様を宿してるのかも』

話は膨らむがツクヨミはあくまで否定する。

「だいじょぶ…今度は勝つから」

『娘伯も何なんだその自信は』


そうこうしてる内に閉会式が始まった。

黒刃の…黒巫女の謎は未だに解けない。

それでも娘伯達は迫る都会での決戦に思いを改めるのだった……。



翌日、清天神社へ帰還した一行を待っていたのは、

「……何これ」

酔い潰れた三人の稲荷巫女とけらけら笑う椿鬼。

「もっと呑まぬかぁ!」

「これ以上は…」「勘弁…」「死ぬ…」

元斎も呆れ果てて何も言えなかった……。

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