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巫女乃禄  作者: 若猫老狐
白と黒
135/182

関西御前試合〜準々決勝〜 (2)

「まずは小手調べ!」

大幣と神楽鈴の二刀流で風花は構える。

対する黒刃は太刀を現して一気に駆け込む。

瞬時に間合いへついた黒刃は風花の後方から一閃を繰り出した。

「やっぱり後ろか!」

武具だけ背へ向け黒刃の一撃を受け切る。

手の痺れに堪えながらも神楽鈴を振るうが、

黒刃はあっさりと後方へ避けてしまう。


「よし…いま…だ!?」

武具を変えようとしたが黒刃は再び距離を詰めた。

慌てて風花は薙刀を持ち大きく振り下ろす。

太刀で弾くと今度は黒刃が連撃を繰り出す。

避けるか或いは柄で受け止める風花に反撃の兆しは無い。

「風花…離れようとしてる?」

「あーもう!なにやってるの風花!」

下がり続ける風花を黒刃は執拗に追う。


それが何かをさせない為の行動とは風花と青井以外に分からない。

「どうしたの?もっと離れた方がいい?」

黒刃は煽るように言葉を掛ける。

「そんなお節介…!」

薙刀に代わり大幣と神楽鈴を大雑把に振る。

策無しで攻撃している訳ではない。


「わ…危ない」

わざとらしく黒刃は後ろへ下がる。

「これでも食らえ!」

風花が現したのは霊的空気銃だ。

青井と風花は試合前に持参してた武具を持ち御札で使えるように画策していた。


しかし黒刃は大太刀を守りの構えで待つ。

霊的空気銃の連射と共に風花は前進する。

放たれた6発を黒刃は当たり前のように全て斬り落とした。

「うそ!?」

風花の隙に黒刃が得物を変える。

「あれは…!」

「試作の霊的空気銃!?」

娘伯も青井もそれを見て驚く。


娘伯が一度だけ使った試作の霊的空気銃。

何故黒刃が御札で扱えるのか解せない。

「バァン」

およそ童の無邪気さで黒刃は試作霊的空気銃を撃った。

緩やかな軌道は駆け出した風花の顔面に直撃する。

「うっづ!」

爆発し吹き飛ばされた風花。

トドメを刺す為に倒れた風花へ黒刃が迫る。


「これで終わ…り?」

黒刃の手から謎の黒いモヤが浮かび上がる。

それに見とれている隙を風花は突いた。

薙刀の切っ先が黒刃の手を掠めモヤが晴れると黒刃は我に帰る。

「っ…!」

黒刃の太刀が風花の首筋で止まる。

決着がつき風花は諦めて大の字で降参した。

「参り…ました…」


風花の一言で黒刃は太刀を消す。

『これにて本日の試合を終了…準決勝は明日に始めるわ』

小百合のアナウンスにより張り詰めた空気が抜ける。

黒刃は何も言わず戦場から去りウェンフーの元へ歩く。


「…何故トドメを打たなかった?」

ウェンフーの鋭い声に黒刃は何も思わず答える。

「……あの子には手を出せなかった」

「調整が必要か…」

携帯を取り出しウェンフーは誰かに電話をかける。

「俺だ…滞在は明日まで延長だ…そうか分かったお前に任せる」

通話を切りウェンフーと黒刃は会場を出て行く。


「ええんか?彼奴を野放しにして…」

「余計な犠牲は払わないと言ったでしょう」

去り行く二人に小百合と和泉は荒波を立てずといった所か。

「大丈夫風花?」

大の字に寝転んだまま風花は動かない。

「怪我した?」

娘伯も青井も心配している。


しかし風花が思っていたのは自身よりクロの事だった。

「あの感じ…娘伯さんとそっくりだった…」

またしても娘伯と黒刃が瓜二つと言う。

「だから!違うってば!」

青井は娘伯本人より否定しているが、

刃を交えたからこそ風花は何かを感じたのだろう。

「うーん…でも何だろう…このモヤモヤは…」


謎を残しながらも今日の試合が終わった事で気持ちを切り替えようとする娘伯。

「明日に備えて宿を探さなきゃ」

「アイサ達も…必要」

流石に野宿は拙いだろう、

しかし助け舟を出してくれたのは小百合の方だ。

「近くの旅館に全員の部屋を取ってあるのでご案内しますよ」

「ありがとうございます小百合さん」


「なーなーうちの部屋もあるんやろ?」

調子良く和泉が絡んでくる。

「和泉は大阪へ一旦帰ればいいでしょう?」

「んな!つれんなぁ…」

「冗談…だけど娘伯様に手は出さないように…あと呑むのも禁止」

明日のエキシビジョンマッチに備えた一言だった……。

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