妖怪探しと (2)
境内でやる事なく暇してる娘伯の元に青井と風花が戻ってきた。
「遣いの人から許可を貰ったのでこれから猫探しに行ってきます!」
「猫又ね…気をつけて行ってらっしゃい」
元気よく手を振る風花と会釈してから追いかける青井。
少し頼もしい姿に成長したと共に娘伯は小さな不安を抱えていた。
「妖怪退治までは流石に…」
しかし一度妖怪を討滅する事に成功した、
それは紛れもない事実。
ふと先程まで2人が練習していた的を見つめる。
叩かれたたり球の命中した跡が残っている。
妖怪でなければ只の幣であり空気銃なのだ。
それは娘伯の扱う霊刀も御札も一緒である。
その距離は数mほどでも夜ならば韋駄天の速さで間合いにつける。
しかし日の登っている間は、
「…遅すぎる」
人並みの走りで的に近づき小刀と同じ捌きで腕を振る。
この時だけは自分が只の人間だと実感する。
白い髪は風に揺れそろそろ昼ご飯の頃合いを告げた。
「よっ娘伯何しておるんじゃ?」
鳥居から声をかけられ娘伯は振り向く。
一升瓶を片手に椿鬼がどこからかやってきた。
「別に何も」
「ふーんそうか…なら儂と一緒に飯を食いに行かぬか?」
突然の申し出に娘伯ははっきり驚いた。
「これから伯父とご飯なんだけど」
「たまには良いじゃろ?ほれゆくぞ」
ついでに的を根本からぶち壊し椿鬼は娘伯を引きずり神社を出て行ってしまう。
「娘伯やちょっと良いか……娘伯や?」
社務所を出て元斎は何故娘伯が居ないのか首を傾げた……。
「安請負したはいいけど手掛かり無しなんだよ?」
神社を出て10分ほど青井はそんな愚痴をこぼし続けた。
あるのは写真に写る猫又と婦人らしい和服の女性だけ。
「うーん…いっそ猫に訊いてみるとか?」
馬鹿馬鹿しいと今度はため息をこぼす青井。
しかし何か閃いたのか風花は鞄から小さな機械を取り出す。
「なにそれ?」
「…ニャンりんがる」
それは猫の鳴き声を人間の言葉に翻訳する玩具。
あくまで玩具なので信憑性は無い。
「まさかそれに頼るの?」
「だってこれが最後の手段だし…」
最初で最後とはよく言ったものだ。
とりあえず近くで昼寝していた塀の上の野良猫に試す。
「今日はいい天気だね」
風花の言葉がネコ語に変換され音が鳴る。
すると野良猫がニャーと返すとニャンりんがるの液晶に言葉が現れる。
『当たり前だろ空は快晴だぞ』
「…毒の強い野良猫だね」
何とかなりそうなので風花は続けて質問する。
馬鹿馬鹿しいと言いつつ青井も効果に内心驚いている。
「この猫知ってる?」
寝転がる猫に写真を見せてみる。
『この模様の奴なら知ってるぜ
確か狛って名前の猫だ』
「どこに居るか知ってる?」
『そこまで知らない…が一目で家猫だと分かる見た目だ』
そこまで言って野良猫は家の奥へ行ってしまった。
「一目で分かる家猫ね…」
「よし他の野良猫にも訊いてみよう!」
結局この方法しかないかと青井も覚悟し、
2人は近所の野良猫に聴き込みを開始した……。




