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巫女乃禄  作者: 若猫老狐
白と黒
114/182

巡る戦い (3)

「諸共…焼き尽くせ!」

マトが詠唱を果たし炎が風花と勝一、そしてクロを取り囲む。

「なんで…目的はクロなんだろ!」

勝一の叫びにマトがほくそ笑む。

「そうだよ…でも邪魔なお前達を消すのに"今は

不要"だからね」

マトの言葉に一同は理解出来なかった。

何故か死んでるクロを哀れむ様子が無いのも不可解だ。


「クロさんにはまだ何か秘密が?」

「でも今は考えてる暇は…あつ!」

火の粉が掠り勝一と風花は焦る。

手持ちの御札では打つ手が無い。

『ぐぬぬ…玄武何をしている!』

見かねて白虎が催促の声を上げる。

今までひっくり返っていた玄武はやっと地に足を付けて炎を睨む。


『火を鎮めるのは任せてもらおう…はっ!』

小さな前足を地面へ叩きつけると水流が火柱をかき消す。

「助かった…」

「まだ来ますよ!」

勝一がため息をこぼすのも束の間、

ロナンが風花へ襲いかかる。

しかし風花達の後ろから放たれた矢がロナンの手を貫き勢いを止める。


「……すー…」

霊力の交じった弓矢を射る青井は止めてた息をゆっくり吐く。

「青井!助かる!」

風花がロナンの隙を見て薙刀を振り上げる。

矢に気を取られていたロナンは胸に大きな斬撃をつけられてしまう。

「くそ…っ!?」

マトが腕を向けるより早く首筋に太刀の刃が掠める。


「遅くなった…」

「娘伯!遅いぞ!」

マトの背後から現れた娘伯に勝一が歓喜を漏らす。

遅れて青井も勝一達に追いつく。

「依頼で貴方達を…捕らえるように言われた」

「そいつらは何故かクロを狙ってる…ついでに俺の命もな!」

勝一が抱えているクロは倒れたまま動かない。


「貴方達は八尾狐と絡んでると聞かされた…全部話すなら悪いようにはしない」

「言うと…思ってるの?」

直後にマトを中心にアスファルトの地面が抉れ娘伯に襲いかかる。

妖術で操られたそれは斬れ味を誇り娘伯との距離を離すには十分だ。

『本来妖怪は単一属性の妖術しか扱えない筈…こんな奴は見た事無い』

ツクヨミは正体不明の妖怪に困惑する。

火、水、風、土、さらには妖力を尖らせた光線、

マトは複数の属性を操れるように改造されているのだ。


「妖滅巫女共…此処をお前達の墓場にしてやる」

「この人数差で勝てると思ってるの!」

ロナンへ向けて薙刀を構える風花と弓を引く青井。

娘伯もじっと見つめ太刀をマトに捉えている。

勝一の周りには四獣達が囲い守りも完全だ。

「そうか…数が欲しいなら増やしてあげる…"やれ"」

マトの号令でロナンは素早く立ち回る。

「この!」「っ!」

青井と風花の攻撃をあっさり避け近くの家屋へ侵入するロナン。


窓を突き破り住人の悲鳴が聞こえる。

「な…なにを…」

「見ていれば分かるよ」

僅か数秒でロナンが戻ってくる。

それからしばらく…家屋から咆哮が聞こえた。

「良い子だロナン…もっと増やそうか」

さらに近くの家屋を襲っては出てくるロナンに妖滅巫女は追いつけない。


最初の家屋から出てきたロナンにそっくりな"それ"に風花は驚いた。

「何で…あの狼男は二匹居たの!?」

「理解出来ないよね…馬鹿な人間には分からないよね」

娘伯の斬撃を結界で受け止めるマトは余裕の笑みで語る。

ロナンと瓜二つの存在は風花達へ襲いかかる。


「よく分からないけど…倒せばいいだけでしょ!」

「風花!待って!」

風花は躊躇わず薙刀を振るった。

一手二手と手応えを感じトドメの一閃を放つ。

そしてロナンの偽物は呆気なく地面へ伏せた。

その姿が変わりゆくのを見て風花は青ざめる。

「うそ……ひと…!?」

事切れたそれの正体はロナンに噛まれた人間。

人を殺めてしまった事に風花は手を震わせる。


「さぁどうする?人間だった者に手をかけられるか…む?」

娘伯はマトから離れ風花の前に立つ。

「私達が手にしている物は人を殺める事も出来る…だけど!」

ロナンが生み出した異形を娘伯は躊躇いなく斬り伏せる。

返り血が袖や頬にかかっても気にしていない。


『人の身から変わった時点でそれはもう人間ではない…』

ツクヨミが娘伯の口を借り風花へ説く。

「でも…私は…」

無防備な風花へ爪を向けるそれを太刀が斬り落とす。

『迷うな!人を守るだけでなく人を救え!』

狼にされた者へのせめてもの情け、

ツクヨミの言葉で風花は我に帰る。


電柱を登ったロナンが上空から風花へ襲いかかる。

「させない…風花にだけ罪を背負わせない!」

青井の指先がロナンを捉えて迷わず射抜く。

胴に深く刺さった矢でロナンは力を失い倒れた。

さらに青井は迫り来る狼男へ狙いをつける。

躊躇いから一瞬目を瞑り、そして矢を放つ。

頭部に命中したそれは倒れるとしばらくして人の姿へ戻った。

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