【7】妖怪探しと
昼の社務所に妖滅連合の遣いが現れたのはつい先程の事。
「妖怪探し?」
思わぬ依頼に清天神社の宮司と巫女は同時に首を傾げる。
狐の仮面を付けた遣いも今回の件は不可思議だと思ってるらしい。
『数日前に猫又の妖怪を飼っていた富豪から連絡がありました』
古びた写真から十年近く前の物と推測する。
着物の女性が抱えているのは三毛猫の猫又だ。
『あまり騒ぎになるのは面倒ですので早急に…との事』
「妖怪探しの依頼なんて初めて…」
元斎も現役時代でそう言った依頼は一度も受けていない。
まじまじと写真を見つめる娘伯。
背景にはいかにも大きな屋敷が写っている。
「ふむ…危険な事では無いし快諾しましょう」
『それは良かった
ここからは私の提案なのですが…依頼をこなすのは境内のお二人に任せてみては如何でしょうか?』
個人的な意見なのだが妖滅連合の意思とも取れて2人は驚く。
『先月に彼女達が妖怪を討滅したのは確認しております』
元斎は隠すつもりが駄目だった。
お仕置きを受けるだろうと娘伯も正座で縮こまる。
『見たところ彼女達には素質があります
これを機に妖滅巫女の増強を図ってみては?』
「青井と風花はただのバイトだ
そう何度も彼女達に負担を強いる事は出来ない」
『今回の件は危険な事ではない…そう言いましたよね?』
自分で言った事を後悔する元斎。
「なら二人に訊いてみる?」
元斎が重く頷いて娘伯は席を立ち境内へ向かう。
娘伯が社務所を出たのを確認すると遣いはため息をこぼし元斎に向き直す。
『いつまでも娘伯様一人に都会の地を守らせるのは無謀と思いますが』
「ワシの時は一人でもなんとかやっていけた…娘伯もきっと大丈夫だ」
その自信はどこから来るのかと遣いはまたため息を落とす。
『最近の妖怪は明らかに組織的な行動をしています…それをただ一人で相手するのは…
その為に妖怪に有効な武器を作らせ彼女達に与えたのではないのですか?』
元斎も言動が矛盾してる事は承知の上だ。
『関西では妖滅巫女の養成も行なってます
考えを改めてはみませんか?』
「いずれは他の者にやらせる…彼女達には…」
「「私達がやります!」」
個室が思い切り開き青井と風花が号を上げた。
「猫探しならバイトの範疇でしょ?簡単ですよ!」
「私は風花一人じゃ危ないと思うから一緒にやるだけです」
誰に倣ってそんな事を言いだすか、と元斎は頭を抱える。
『彼女達は快諾してくれましたよ?』
「あれ?この人は誰ですか?」
『初めまして私は妖滅連合の使者…娘伯様や元斎様と同じく妖怪と相手する組織の一員です』
簡略に遣いと呼んでくれていい、と遣いは会釈する。
「待てワシは…」
「これも娘伯さんの支えになる…そうですよね?」
青井に言われ元斎はそれ以上の言葉が出ない。
「ならば念の為に大幣と霊的空気銃も持っておくんだ…気をつけるように」
「「はい!」」
『では私から改めて依頼の説明を致します』
遣いは仮面の中で笑みを浮かべた……。




