9話「推測する吸血鬼」
さきみやびです
設定を考えるのがまだ慣れていないのかな
少し難しくなってしまったかもしれない。
「無事だったんですね!」
避難所へ着くと、シャリエが少し涙を流しながら走り寄ってきた。かなり心配してくれていたのだろう。レイスは、そんなシャリエを胸元へと引き寄せ抱きしめた。
「我があれに劣るはずがなかろう。まぁでも、心配かけたな。」
シャリエが胸元でワンワンと泣いていると、奥の方から一人の老いた男性がこちらへ向かってきた。
「レイス様。この度は村を救ってくださり、ありがとうございました。私は村長のスレイブと申します。それで、あの龍何故襲ってきたのでしょうか?」
レイスはぎっしりと抱き着いているシャリエを離して、村長の方へと向かった。シャリエは悲しそうな眼をしていた。
「あの龍の主に会って、何故襲わせたのか聞いたのだがな。必要なことだったからとしか言わなかったんだ。でもあの感じ、龍人族は何か壮大な計画を実行しようとしているのだろうな。」
「そうですか。いったい何を計画しているんでしょうか...」
何故シエナはこの村を龍に襲わせたのか、今はまだ期じゃないと言っていた。ということは、いつか何かをしてくるということだ。何かとはなんだ。いったい何を企んでいるんだ龍人族は。レイスは考え込んでいると、シャリエが思い出したような顔で話しかけてきた。
「そういえば、レイスさんと出会う前日なんですけど、クエスト先の酒屋で食事をしていたんですよ。すると後ろで龍人族の人たちが会話をしていて聞こえてきたんですが、『龍の血の結晶は一体セントローズのどこにあるんだ』『俺も知らん、それを探すのがシエナ様からいただいた俺たちの命令だろ?』と話していたのを聞いたんですよ。」
その話を聞いてレイスは納得した。この村を襲った理由や、シエナたちの計画も。
「なるほどな。そういうことだったのか。あいつがやろうとしていることは、あながち正しいのかもしれんな。あの設定が今になって生きてくるとはな。」
「さすがはレイスさんです。それでいったいどういうことなんですか?」
レイスは地図を取り出して机の上に広げて見せた。
「数百年前、今のセントローズがあった場所は龍人族の土地だったんだ。その後、人族と戦争があり、龍人族は負けた。その代償に土地を占領され、今のセントローズが完成したという歴史がある。」
AKOが2周年の時のイベントクエストで、AKOの過去の設定が読めるシーンがあった。レイスはかなりの古参プレイヤーなので、その情報を知っていた。ちなみに何故龍人族が負けたのかというと、設定では人族の知略的な作戦によりと書かれていた。
「そんな過去があったのですか、さすが長寿の吸血鬼です。」
村長は立っているのがつらくなったのか椅子に座った、シャリエはレイスの隣で立ったまま話を聞いていた。レイスはそのまま話をつづけた。
「セントローズ全域に魔物の侵入を防ぐ結界があるのは知っているな?あんな広域に一切の魔物の侵入を防ぐ結界なんてその時の人族は触媒なしには起動することはもちろん、維持し続けることも難しかった。それでもその結界を張りたい人族は、触媒に手を出した。それが、龍の血の結晶といわれる代物だ。」
この話も全てAKOの公式設定なのだがな。龍の血の結晶とはAKOの時はハロウィンの期間限定で、レベル3000の人たちにしか受けることの許されなかったクエストの報酬で、そのクエスト内容が魔族に操られた龍を倒すというものだった。そして、その龍のドロップアイテムが龍の血の結晶ということになっていたが、その龍がでたらめに強すぎて、勝てたのはレイス含め10人しかいなかった。
「その名前は聞いたことがあります。たしか、龍人族の秘宝だとかではなかったですか?」
なるほどな、この世界では秘宝ということで伝えられているのか。あのアイテムの説明欄には、『高位の龍、滅する時、之は具現する』とかいてある。龍が傷ついたときに出る血ではなく、龍が滅びた時に出るより濃い血の結晶ということだ。
「あれは秘宝でも何でもない、遺品の一つのようなものだ。ここからは推測なんだが、戦争後人族が占領した地域に龍の血の結晶を祭っていた祠があったのだろう。それで人族はそれを使って、結界を完成させたんだろうな。それを取り戻すのがシエナ達の目的なのだろう。」
でもなぜ今になって、取り戻そうとしているのかが分からない。それを確かめるためにもやはりもう一度シエナに合わなくてはならない。
「そ、それではなぜこの村は襲われたのでしょう?セントローズの方からも結構離れていますのに。」
村長はかなり真に迫った顔をしていた、恐らく村が襲われたことが本当に心にきているのだろう。
「簡単な話だ。この付近には、魔鉄が取れる鉱山があるだろ?龍人族はそれを知っていて、セントローズへの供給を防ぐためだろうな。」
魔鉄はかなり質のいい武具を作るために使われる。龍人族はそれを脅威だと思い、鉱山の付近にあるこの村を襲うことで、それの供給を止めようとした。相手の武具の素材の供給を止める、戦いの時の基本だ。
「そのために、この村を...私は頑張って...この村を成長させてきたのに...」
村長はその場で泣き崩れてしまった。ギリギリでせき止めていた心のダムが決壊したような感じだろう。頑張って繁栄させたのに、それを一瞬で破壊されると誰でも悲しくなるものだ。シャリエは泣き崩れている村長の元へ行って励まそうとしていた。
「とりあえずこのままではシエナ達は近いうちに攻めてくる、何とかせねばならないな。」
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回は少し話がむずかしかったかもしれません。
自分自身何回か書き直したんですが、やっと形になったので。
次回もよろしくお願いします。