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詩集その1

桜咲く四月は

作者: 浅黄 悠

桜はほろほろ散り始め

無伴奏に春のひとときはどうしようもない穏やかさ


桜の花びらをつかまえると幸せな事が起こるよ

誰かは忘れたが誰かが言っていた

がくが透けるように薄く

手をつないで踊るような繊細なくす玉のあつまり

手をのばして掴みたい


何時まででも冬だともうすっかり諦めていて

季節なんか忘れて写真の中でしか知らなかった春を見る

だからいつも1度目の春

本当に来たのかと嘘のような気分になる


遠くに見つけるとこころを焦がすほど美しく

すこし離れて見上げるともっと近づきたくなる

でも見上げればただのきれいなお花

いったいどこに行けば私の見たい桜が見られるの?

桜の白はきぬのように柔らかい

雨に打たれるのを待っている

桃色はどこかにある

探そうとしてはいけないものなら受けとめるしかないね


雨のぱらぱらをひとつとって眺めたい

嫌われ者、内気な彼がくれる

ドロップ缶に水を入れたみたいな

桜の水が映す濡れた黒が冷たくて優しいから


愛されていた花びらは踏まれて濡れていく

石畳の色に溶かされて消えていく

別に悲しくなんかないよ、と彼らは言い

むしろあなたのいない桜なんてただの盆栽だ、と私は吐き捨てる


いい加減歩き出さないと

桜にさらわれてしまうかもしれない

瞬きほどの時間にその世界の中

いったいどれだけの桜が舞っているのだろう

昔詠まれた歌が散るような

陽に反射するさざなみのように__また、風が吹いた






__四月はブラックホール

空気に含んだ肌寒さと 

ひとひらの黒いノイズ

桜の花びらを 

幸せを捕まえようとして

我先にと子供達が走っていく 私を追い越してゆく



テープラジオの中に閉じ込められた声は壊れたまま咲き誇る

どうして桜を見て泣き出す人がいるのか

小さな頃よりは微かに分かってきた


もうぐちゃぐちゃな気分

笑うしかないよね

螺旋階段は上にくるほど酸性雨で錆びているのだから

季節を回りつづけて

重い足がいつか春から動かなくなるのにうすうす気づいているから

人は純粋に笑顔になれる方法を探している

だからやっぱり いつの時代も貴方が必要なのだろう


それは寂しいワガママなんだろう

とうに消滅した物語が襲いかかり

知らないうちに飲み込まれる弱虫な私

貴方自身もけっして強くはないけれど

それでいいから

どうか来年もそこで咲いていてほしいのです


_もう遠い子供の声、

幹に手を触れてそこに流れるものに思いを巡らせた

私の記憶

なにか大切だったものや

あの頃の思い出は


あのしあわせは


何処だろう。





そこはまだ、ふんわり薄桃色の花片が舞い続ける、春…


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