ミヤ
蒲田駅。
飲み屋やホテルが栄えていて、終電間際まで明るい光が街を包み込んでいた。
私は西口から出てすぐの喫煙所で時間を潰している。
今日会うのは"関係"を持ち始めてから3ヶ月ほどの男。名前はユウタロウ。
今時の可愛い顔立ちと、それに似合わない背の高さ、そして笑うとできるえくぼが印象的な人だった。
2月半ばを過ぎたこの季節、寒くてタバコを持つ手が震える。冷たくなった手が痛みを覚える頃に、私は思う。
「 自虐 」
タバコを吸う行為も、かじかんだ手を温めることもしないその様はまさにそうだった。
もし、これが大好きな誰かに会うためだったら…
きっと私の心はこんなに死んでいなかったと思う。
灰を地面に落としながら正面の喫煙スペース用に立てられたガラスに映る自分を見て、確認する。
私が可愛いことを。
大丈夫
大丈夫
「 おまたせ、ミヤ 」
振り返るとユウタロウがいた。いつもの深緑のコートにグレーのマフラー。
「 遅いよ 」
「 ごめんなさい。タバコ、フィルター燃えそうだよ? 」
ひょいとタバコを奪うと灰皿に揉み消さずに入れる。その長い指が、大嫌いだ。
その一連の動作を目で追いながら、私はお礼を言う。
「 ありがとう 」
「 早く行こう。寒くてたまらん 」
そうはにかむ笑顔に私は笑顔を返せない。
いつもそうだ、相手の感情が高ぶるほどに冷めて行く。
歩き出す彼の背中を、手をポケットに突っ込みながら早足で追いかける。
「 いつものところでいいよね 」
22歳、冬。
私、山下ミヤは、これからこいつとセックスする。




