待ち伏せ
翌朝。
いや、翌朝ではないかな、あれから……三、四時間は経っているかな?
サールで目覚めた私は、また瞼が閉じようとするのを必死で堪えて、とりあえずサールのモニターをつけた。
モニターには外の林が映し出される。
今日はいい天気だな~、お日様が気持ちよさそう。
私は自分にかけてあるタオルケットをどけて、外に出ようと右手元にある赤いボタンをポチっと押した。
すると前のような失敗はなく、一発でサールが展開した。
だってあのあとちゃんと説明書読んだもん!(えっへん)
誰もいないところで、私は鼻息を荒くする。
「よっ」とサールから飛び降り……しっかり着地をする。――前のようにずっこける私はもういない。そう、私は日々進化するのだから。(キリッ)
誰もいないところで決め顔も披露する。
さてとっ、今日は何しようかな……
私はその場に立ったまま今日の予定を頭の中で立てる。
「……よし」
考えるのを早々に諦めた私は朝の街に繰り出すことにした。
街をフラフラと飛んでいると黒一色の服装を着た若者たちが、同じ道を歩いているのが目に付いた。
そう、学生がちょうど登校しているところだった。
その頃の私は『学生』も『学ラン』も知らなかったので、ただただ気味の悪い光景にしか見えなかった。
……その列を興味本位で眺めていると、その中で見覚えのある顔を見つけた。
ん? と目を凝らすと、そこには数時間前にあったばかりの少年が眠そうに歩いていた。
少し驚いたが、それよりも……なんだか申し訳ない気持ちになった。
昨日は、ごめんね。
届くはずのない声を心の中でつぶやく。
少しの間しゅんとしていた私だったが、そこでふとあることに気がついた。
私あの子に顔見られてない?
いや、見られているだろう。
相手の顔が確認できたのにこちらの顔は見られないというのは……まず、ないよね……。
あー、となると色々厄介だなぁ……かと言って殺すとか、そういうわけにはいかないし……てかまずそんな勇気ないし……
それから私が考えて、考えて、考えて、考えた答えがこれだ……
血、もらお。
昨日失敗してしまった血液採取だ。
やっぱり任務の中ではこれが難しそうなのと、もう私の顔はあの少年にバレているからだ。
――通常私は相手の記憶を数分間だけだが消すことが出来る。だがそれには条件がある。 一つは、あまり時間が経ってしまうと消せない。出会った直後くらいじゃないと効果はなくなってしまうのだ。 二つ目は
、印象に残ってしまうと効力が落ちる。こうなるとちょっとやそっとのきっかけで記憶が戻ってしまうのだ。 ん、割と不便だ。
まあ、条件を無視して記憶を消す方法もあるにはあるのだが……
だが、突然目の前に現れた人物にいきなり血を採られたら、印象に残らないはずがない。
なので、どうせ顔がバレているなら……ということだ。
よーし! そうと決まれば作戦開始!
私は前を歩いている学生達が商店街に入っていくのを見て、そこへ先回りして……店と店の狭い暗がりに身を隠した。――途中会った私を見た学生たちの記憶はちゃんと消しながら……
そして少年が私の視界に入った。
ブックマークしてくれる人がいました。
泣きそうになりました。
気まぐれでも罰ゲームだとしてもすごく嬉しいです。
本当にありがとうございます。