月の上 (続)
目の前に広がっていたのは、広い広い宇宙。
「……」
俺は数秒間固まってしまった。
おい。まじか。
そこには水族館の大水槽で使われるような、大きな窓がはめ込まれていた。
そしてそこから見えるのが、クレーターだらけの灰色一色にそまった地面。闇の中に散りばめられた、無数の星星。その中で一番綺麗で、はっきりと見える青い星――地球。
とてもとても幻想的だった。
宇宙って、こんなにも綺麗で……神秘的だったのか。
俺がこの絶景に口を開けたまま圧倒されていると右側から、俺に声を掛けるものが現れた。
「……おは……よう」
鈴を転がしたような綺麗で透き通るような声だった。
それに加え、聞いたことのある……
「――!!」
つまり……
「よく……寝れた……?」
萌葱髪の少女だ。
凄い勢いで、首を九十度右に向けると、やはり彼女がいた。
服装は相も変わらずパイロットスーツだった。
結構前から思っていたけど、その衣装は目のやり場にこまってしまう。
「……」
「……?」
だが俺たちはまたいつだかの再現のように見つめ合ていた。
それから数秒がたって、気まずそうに彼女が微笑みを浮かべる。
なんかこのパターンどこかで……
いや、あの時の笑顔とは違うようだ。
前の笑顔は、殺意が感じられる――目が笑ってない――明らかに不機嫌のような顔だった。
だがこの笑顔は殺意なんて一ミリも感じられない。――ちゃんと『微笑んで』くれた。
相手に、敵意がないようで少しだけホッとする。
まあ、ビビって何もできないですけども……
俺の心臓がうるさくなっていく。
緊張に焦燥、それに恐怖で俺の胸の中がいっぱいになっていく。
正直、全力で逃げたいのだが、足が動かない。――恐怖がそうさせてはくれない。
そんな沈黙の時間が続いていたが、彼女がおもむろに口を開いた。
「ごめん……なさい……」
「……え?」
俺は反射的にそう答えていた。
頭を下げている少女は続けて言葉を並べた。
「チキュウに……いたとき……槍……お腹に……刺した……」
「……」
「だから……ごめんなさい……」
そう言ってチラっと一瞬だけ、こちらを見た。
まあ、大体予想はしてたけど……
「……やっっぱりお前かああ!!」
少女は突然の大声に頭を下げたまま肩をビクッとさせる。
そして下げていた頭を勢いよく上げ、弁解を始めた。
「だっ……だって人間が……そこまで脆いと……思わなかった!!」
俺はその言葉にカチンときて、口喧嘩が始まってしまった。
「だってじゃねえよ! こっちは死にかけたんだぞ!?」
「だから……ごめんって……いってる!!」
「はあ!? 逆ギレですか!? 反省する気ありますう!?」
「うるさいうるさい!! あなたが……もろいのが……悪い!!」
「おいおいおいおい!! じゃあ何か!? あんたはあれ受けても平気だってのか!?」
「? ……うん」
「だよなあ! それが当然……って、んん!?」
俺は少し頭を冷やして問いかけてみた。
「今……なんて?」
「え? ……だから……あれくらいなら……タンスの角に小指ぶつけるくらい……の、痛みだよ……」
……はあ!?
Σ(゜д゜lll)Σ(゜д゜lll)Σ(゜д゜lll)Σ(゜д゜lll)
書く事がない。