メテア・ヴェーガ
ホントサーセン゜(´;ω;`)
「……」
俺はしばらく固まっていた。
学校の帰り。
「……」
いつものように授業を終え、途中まで加藤と帰った。
それからいつも通りに電車に乗り、いつも通りに改札を出て、いつも通りに自転車に乗ってここまできた。
なのに……
なのに……
どうしてこうなった。
「……(ゴク)」
俺はつばを飲み、自分の状況を確かめる。
俺は今自分の家の前にいる。
その家は、二階建てで、白一色で統一された清楚感あふれる家だ。
脇には駐車場もある。
で、玄関があり、その横には『柴咲』と書かれた表札がかけてある。
間違いなく俺の――正確には俺の親のだが――家だ。
だが、その家の玄関には美少女が一人、玄関を背もたれにして立っている。
見覚えのある萌葱色の髪。紅い瞳。体にぴっちりと張り付いている漆黒のパイロットスーツ。
言うまでもないだろう。
やつだ。
俺は数秒間彼女と視線を絡めていたが、彼女が俺を見つめながら口を開いた。
「……こん、にち、は…………メテア……メテア・ヴェーガ……」
彼女は自信なさげな声でそう言った。
まだ違和感はあるが、しっかりと伝わる。
れっきとした『日本語』をちゃんと話していた。
「あ、名前……」
彼女は少し遅れて、こう付け足した。
俺は頭が回らなかった。
ひたすら彼女を見つめていた。
そんな俺のことを知ってか知らずか、彼女は不思議そうな顔――不安そうな顔――をした後、にこっと微笑んだ。
うん、可愛い。
……じゃなくて、確かに可愛いけど。
どこかで見たことのあるような?
今度は俺が不思議そうな顔になる。
どうしてだろうか、どこか懐かしい。
俺がそんなデジャヴ――既視感に浸っていると、彼女のほうが動きを見せた。
彼女は微笑んだまま、俺との距離をゆっくりと詰めてくる。
一歩一歩着実に……
もしかして……怒ってる?
なぜだか俺はそんな印象を受けた。
これは殺意と言うやつだろうか? ――わからんが……
あー……
本能がヤバイと言ってるのがわかった。
俺は笑顔を浮かべた。
何もおこらなかったが。
だめだこりゃ……
勢いよく自転車を反転。
そのまま漕ぎ出した。
後ろから「あ……」という声が聞こえたが、構わず足を動かした。
正面の十字路を右折、その次も右折、次を左折、緩やかな右カーブを経て左折、右折、左折、右折、左折……
道をデタラメに――ひたすらに走った。
「……ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ……」
俺のスタミナが切れる頃には、河川敷にまで来ていた。
看板には『荒川』と書いてある。
俺は自転車を置き、傾斜になっている芝生の地面に腰掛ける。
はぁ……ここまでくれれば、ひとまずは大丈夫だろう。
あれからどのくらい時間が経っただろうか。
そうは思うものの携帯を出すのも、憂鬱だった。
華凛、心配してるかなぁ。
「……疲れた」
俺はぼそっと独り言を言って、寝転ぶ。
空はもう真っ赤になっていてすごく幻想的だ。
月もはっきりと出ている。
俺がぼんやりと空を眺めていると、視界の端できらっと光るものがあった。
なんだ?
俺はそこに視点を合わせ、目を凝らす。
それは黒くて槍の形状をしていて、近づいてきているということが分かった。
……は?
「…………ッ!!」
ヤバイと思ったが、もう遅い。
俺は体を起こ……
ズドン!!!
そうとしたが、間に合わなかった。
「……」
気づけば槍は俺の腹から生えていた。
な……なんだよ……これ……
数瞬遅れて、俺の体に痛みが迸る。
「……う……がぁぁっァァァァァ!!!!!」
熱い。熱い。熱い熱い熱い。
「あぁぁぁあぁっっっぬぁっあぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
視界は赤で染まっている、俺は必死に悶えるが、槍はびくともしない。
やがて、俺の体は言うことを聞かなくなり、力が入らなくなった。
俺は今どんな状況なのだろうか。
なんでこうなった……?
かすれていく意識の中でそんなことを思った。
やがて俺は考えるのもやめ、意識を手放した。
一日遅れちゃいました……
来週はちゃんとやるから……どうか……どうか……見捨てないでぇぇぇぇ゜・゜・(ノД`)・゜・