黒い水平線
やったゼ、第5話目ですw
続けるのが苦手なのでここまでこれてとにかく良かったです。
街中の車は皆同じスピードで走ると義務付けられている。
そんな中、危険区域に真っ向に走っている車は俺たちくらいだろう‥‥。
俺が運転席、秋田さんが助手席、そして後ろに優人
音楽でも流したいところだが車内には監視カメラがついていて常に見張られている。
仕事だということに変わりはないわけだ。
『海なんて写真でしか見た事ないわ〜』秋田さんがあくびをしながら化粧直しを始めた。
『秋田さん、今勤務中ですよ?』語尾を強めて俺は咎めた。
『勤務中って、やまだんお堅い〜もしかしてA型?それと私のことは”あやちゃん”って呼んでよ』
『遠慮しときます。仕事上なんだから苗字で呼び合うべきでしょう』
俺はどうも彼女をよく思えないでいた。
『え〜?なにそれ一緒に飲んだ仲でしょ私達、ね、らぎらぎ?』
後部座席に向かって彼女は話しかけた。
バックミラー越しに優人が居眠りしているのが分かった。
『おいっ優人何寝てんだよ?!』
『ふがっ‥‥何?着いたのか?』
すると狭い車内で甲高い笑い声が響いた。
『何今の〜聞いた?豚みたいっアハハハッね♥、もう一回やってよらぎらぎ』
『やらねーよ、俺豚じゃないし。そんなことよりあやちゃん、俺の事は優ちゃんで良いから』
寝起きの癖にいやにデレデレしている優人を見て俺は少し引いた。ていうか会話聞いてたのかよ。
『さっすがらぎらぎ、これからは優ちゃんって呼ぶね!』
全くこんなんでこれからやっていけるのだろうか‥‥。
ビルらしきものが次第になくなって来た。危険区域に近づくにつれ、人も自然もない殺風景な一本道の道路は続く。
そして窓から見え始めたのは黒々としたブラックホールのような水平線だった。
これが俺が知る海だ。
久しぶりに見た。相変わらず祖父の写真とは程遠い姿をしている。改めてそう感じた。
優人も秋田さんも海をぼんやり見つめていたがすぐに視線を戻した。
『見た事ないんだよな‥‥蒼い海‥‥』唐突に優人が呟くものだから俺は自分の心を見透かされたと内心焦った。
秋田さんは爪をいじりながらも『私だってそうだよ‥‥まさかこんな形で海に来るなんて思いもしなかったし‥‥できれば二度と来たくなかった所よ』とため息混じりに答えた。
俺たちはかつての蒼い海を知らない。だからなのかこの空気がものすごくもどかしく思えた。
人間によって奪われた自然‥‥。そう学校で教わった。
もしもう少し生まれるのが早かったら‥‥この時代に生まれなかったら‥‥。
気がつくとそんなことばかり頭をよぎる。それが俺たちの運命なのかもしれない。
つづく
読んで下さった方、ありがとうございます!
ちょいと鬱気味かもしれませんが更新して行けたらと思います。