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サバイバー   作者: denali
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なぜここに彼女が居るのか?

家族にも紹介していないのに、どうやってこの状態、この病院が分かったのだろう?


きっと私の携帯電話に連絡があった人に説明してのだろう。


一人で勝手に決めて決断したように、別れを言おうと思った。


そう決めたが、考えると涙が出てくる、彼女の幸せを考えるなら、パートナーは私ではない方が良いに決まっている。負担をかけてしまうのは分かり切っていること。


今の状態で、彼女を大切にできても守ってあげることは出来ない。


下から彼女を見ていると、彼女も泣いていて、私の顔に彼女の涙が落ちてきた。

彼女の口はへの字に曲がり大泣きしていた。


しかし、お別れを言うのは今しかないと思い言おうとしたとき

「私、リハビリのこと頑張って勉強しますから、一緒に頑張ろうね。とりあえず今はゆっくり休もうね。」

と彼女に言われてしまった。


「たぶん、あなたのことだからそのうち別れ話をしようと考えると思うけれど、私のことを嫌いになったわけでは無いのなら別れる気はないからね。」と先手を打たれてしまった。


普通は、感動して泣くところなのかもしれないが、私の性格を分かっているので笑ってしまった。

発症後の初笑い。


凄く心配したのに、笑ってることに怒られてしまったが、生きていてくれただけで嬉しいと言われたことに感動してしまった。


救われた。こんな状態になった・・・と言っても、どういう状態か自分でも良く分かっていないが、麻痺していると告げられてから、起き上がっていないし、両手足は寝返りをしないようにベッドに縛られている。


一緒に頑張ろうと力強い言葉に少しの希望が持てたのは確かだ。


せっかく決意したのに、言えなかった。

言えなかったことに後悔はしないか?

その答えが分かる日が来るのはいつだろうか?


今は、考えたくない。


これから始まる新しい人生。彼女と一緒なら生きていけるだろうか?


そもそも、本当に立ち上がることも出来ないのだろうか?

まずは、現実を確認したいものだ。


この部屋の名前はSCU。

Stroke Care Unit脳卒中ケアユニットと言うらしい。彼女から教わった。

「ビックリしたよ。SCUに居るんだもの。大体SCUなんて初めて聞いたし、初めて見たよ。」と言われた。

「SCU?何それ。」と私が聞いたら、説明された。

脳の集中治療室。やはり、危険な状態だったのだろう。


この部屋に入るのに、私の状態が良くないので、代わりに家族の承認が居るとのことで、私の家族と初対面した。


初対面の場所が病院とは・・・。ちゃんとした形で紹介したかった。申し訳ない気持ち。


私は、顔の半分も麻痺しているので、口が上手に動かないが、会話ができたことで安心してくれたみたいだ。

しかし、ろれつが回らないことに悲しんでいた。


ずっとずっと泣いていた・・・。


二人きりにしてもらい、二人でずっと泣いた。たぶん一生分泣いた。

付き合って時間は経ってないけど、絆は強くなったと思う。

別れようと考えた自分が恥ずかしかった。


私と会話をしてみて、少し安心したみたいだが、体に繋がっているチューブの数、モニターを見て、入室した瞬間に覚悟したと。


その覚悟は、私が思ったこととは違って、彼女が私を支えていこうという覚悟だった。


「一番近くに居て、一番の理解者になるよ。」と言われた。そう言ってくれた。


そういう言葉が出てくるとは思わなかったが、ショックでもある。

何も出来ない状態なんだと確信してしまったし、男である私が彼女を支える立場でありたかった。


まだまともに担当医と話をしていないが、家族と何か話したのだろうか?

いまだにこの部屋から出られないということ自体、生命の危険は回避していないのだろう。


この現状に終わりは来るのだろうか?


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