表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サバイバー   作者: denali
4/6

温もり

左腕が締め付けられているために目覚める。


痛みは無いが、感覚が鈍い。締め付けられているというような気がする程度だ。

心地は良くない。

ナースコールを押して、この締め付けられるような気持ちの悪さを説明して、何か対処をしてもらおうと思ったからだ。


数十秒で看護師が来た。

私は、「なかなか熟睡が出来ないので、この血圧測定はどうにかならないですか?」と聞いてみた。

「24時間血圧を管理する必要があります。これは、外すことが出来ないので我慢してください。」と言われた。


寝ている間も、30分おきに目覚めてしまう。ゆっくり眠ることも出来ない。

いい加減に勘弁して欲しいものだ。


何日経ったのか、今日が何日なのか、全く分からない。

不思議なことに、どれだけでも眠れる。

そういえば、食事もした記憶が無いし、水分補給もした記憶がない。

何故か尿意があり、それで目が覚める。

その都度ナースコール。

数十秒で看護師が来てくれる。

ドラマ等で見たのとは違い、とても早く来てくれる。

ズボンと下着を下げられ、尿道にチューブを挿入され、下腹部を押されて出させてもらう。

恥ずかしいが慣れてしまった。

しかし、チューブを挿入された瞬間の痛みが激痛である。

これが嫌でついついギリギリまで我慢してしまう。


私が寝ていても何分か毎に看護師が頭上にあるモニター(心拍数、酸素量、血圧が表示されていると思われる)を確認しに来て起こされる。


「トイレを我慢していますね?すぐに用意しますので出してください。」と言われる。


トイレを我慢すると血圧が上がるらしく、血圧が下がらないと再度脳出血を起こしてしまう可能性があるからだと割と強い口調で言われる。


トイレを我慢できなくなったら自然と起きるだろうにと思いながらも、ここでは従うしかない。


入院して、毎日38℃以上の熱と頭痛に悩まされていた。

熱を下げるために、首と脇に氷を包んだようなタオルを置かれる。

案外気持ちが良かった。


この頭痛は一体何時治まってくれるのだろう。


途切れることなく続く頭痛にナースコール。

何てありがたいボタンだ。

他に患者は居ないのかと思うくらい素早く対応してくれる。

痛み止めを手伝ってもらい飲む。


少しの時間は治まっていたが、また痛む。

誰かが後頭部を殴っているのではないかとさえ思えてくる。


倒れてから、ずっと何かと戦っている。

夢の中でも。


禁煙をすると、喫煙している夢を見るという話を聞いたことがあるが、倒れてからはランニングしている夢ばかり見る。


走る動きが失われてしまったのかなと思ったが、きっと大丈夫だと信じて眠る。


夢の中で彼女と居る。

どこだろう?


このままずっと一緒に居たいと思うけれど、彼女の幸せを考えたら別れるべきだろう。

この障害を背負ってしまった体の男と一緒に過ごさせると思うと負担をかけてしまうのは必然である。


付き合って2ヶ月足らず。

分かれるなら今しかない。


とても会いたいが、会ってしまうと気が変わるので、申し訳ないがこのまま連絡出来ない状態でフェードアウトしていこうと思った。


そんなことを考えながら眠っていたのか、涙が止まらなかった。


左の頬を流れる涙の感覚は無かったが、誰かの手で拭かれたのは感じた。

感覚が鈍いはずの左手に温もりを感じた。

優しい温もり。


彼女だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ