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サバイバー   作者: denali
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転落

自営業の社長の息子。結婚はしていない。

仕事は、建設業。主に現場に出て作業をする仕事をしている。

コンクリートを主体に必要な場所に様々な大きさの穴を削孔していく仕事。ボーリング作業とも言う。

20歳から本格的に始め、もう13年。

ベテランと言われてもおかしくない。

技術力も上がり、いろいろな会社の方々からも信頼を得始めた年であった。


私は、健康にだけは自信があった。

仕事をするために重要な体力にも自信があった。

病気は風邪くらい。


175㎝、68㎏という体型。

週に4日、健康と体作りのためにジム通いをしていた。


そして、週に5日ランニングしていた。

健康診断で唯一引っ掛かったのが低血圧だった。


上が90mmhg前後という数値。

いたって健康が自慢。


そんな状態で結婚していないというのは、友達には、変な性癖があるからだとかからかわれたりしていた。


この年の9月に、知り合いのコンパに行き、ある女性に会い、11月3日に付き合うことになった。


その年のクリスマスイブ。


人生で初めてプロポーズをした。

「来年の11月3日に結婚をしてください」と。


付き合い2か月足らず。


この人しかいないと思わせてくれる今まで出会ったことが無い優しくて正確の良い人だった。


驚いたようで、返事は「う、うん」と。


一瞬どっちか分からない返事だったが一応OKをもらった。


最高のクリスマスイブになった。


次の日から、今まで以上にバリバリ仕事を頑張れるような気がした。


今までの人生で一番充実した年になるはずだった。


12月27日いつものように仕事を終え、コインパーキングに駐車している作業車に乗り込もうと、現場から徒歩5分くらいのそのコインパーキングに向かって歩いていた。


コインパーキングに到着し、さらに精算機の方へ向かおうとした時だった。


後頭部に激痛が走った。


今まで味わったことのない痛み。


その場に2~3分ほど頭を抱えて座り込んでいたと思う。


頭痛が治まり、精算機へ向かう。


自分の思うように体が動かなくなっていた。


左足は足の甲を下に向けて歩くようになっていた。


左手に持っていた財布は、持てなくなっていた。


「???」


どうなっちゃったのかな?と思っていたがとりあえず駐車料金を支払い、車の座席に座りたかった。


何より自宅に戻りたかったが、落とした財布を拾おうとしゃがみこんだ時、そのまま尻餅をつき、座り込んでしまった。


そして、座り込むと座っている姿勢が出来ず、後ろに倒れ仰向きになってしまった。

何故か、救急車を呼ばずに自宅に電話してしまった。


母親が電話に出た。

「もしもし。」と。

「あ、俺だけど。」

この時に自分で気づいた。

口の動きがおかしく、しっかり発音できていないことに。

「どちら様ですか?」と母親。

オレオレ詐欺とでも思っても仕方のない状態。


伝わりそうもないので電話を切る。

駐車場で仰向けに倒れこむ男に、通りかかった人が普通ではないと感じたらしく、様子を見に来てくれた。


「救急車」と一生懸命発し、何とか伝わり意識が朦朧としてきた。


眠ったのか、意識を失ったのかは不明。

救急車の音に気付く。


言葉が出ない。

何か冷たい物が降っている。

雪。

左の顔に落ちる雪は、感覚が無い。

救急車に乗せられ、中では隊員の方が忙しそうに動き回っている。


聞こえてくる言葉は、「命の危険があると思います。」「血圧が測定できません。」「のどの渇きを訴えています。」


どのような状態で、何が起きたのか分からない。

今、分かっていることは、まだ生きているということ。

救急車でどこかに運ばれているといこと。


仰向けで寝かされた状態で、救急車の窓から見上げた空は薄暗く恐怖がさらに増していくような状況だった。

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