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アンラッキーハプニング

 今、この扉の向こうには、家族ではない異性がシャワーを浴びている。生まれたままの姿、そうつまり全裸でいるのだ。この状況で興奮できない男は漢じゃない。


 だが……

 だが!

 相手は小学生だ!


 そうだ、小学生なんだ! なんで俺はドキドキしてるんだ!?

 いや、確かにあいつは可愛い。そこらの小学生など比べものにならないレベルでだ。もし俺も同じ小学生だったなら、好きになっていてもおかしくないだろう。性格はアレだけど……

 だけど、俺は高校生で、ロリコンじゃない。どちらかというと年上が好みだ。

 なんだかそうやって自分に言い聞かせてる時点でおかしいのだが、段々と冷静になってきた。俺は風呂場の前からリビングに移動し、ソファーに座ろうとする。

「キャーーーーーーーーーーー!!!!」

 風呂場から大きな悲鳴。何事かと思い俺は反射的に駆け出す。


 バァンッ!!!


「どうした!?」

「あ、あれ……あれ!」

 スウィートストロベリーが指差した先には、どこから入ったのか一匹の虫が。俺はその虫をひょいと手で掴み、窓から外に逃がす。

「あ、ありがとう……」

「なんだ、お前もけっこう可愛いと――」

 振り返った瞬間、目に飛び込んできたもの。

「だああああぁぁあああぁあぁ!!!」

 慌てふためきながらも、俺は何故か目をそらすことができなかった。

 俺の視線の先を見て、目を丸くして顔を真っ赤にするスウィートストロベリー。

「こ、これは事故だ!てか、俺はお前を助け――」

「キャーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 彼女は虫を見つけた時よりも一段と大きい悲鳴をあげ、


 バキィッ!!!!


 俺の顔面を殴り飛ばした。そのまま吹っ飛ばされた俺は浴槽へ頭からダイブ。当然、お湯など張ってない。脳天を直撃し、意識が遠のいていく。

「貴様など! 貴様など事案レベル2だ!!」

 ギャーギャー喚き、こちらに向けてなにやらボタンを押した彼女に俺は何か言おうとしたが、言葉にならずそのまま意識を失った。



 目が覚めると、そこはリビングのソファーだった。頭を少し起き上がらせると、激しい痛みが走った。同時におでこから濡れたタオルが落ちる。

「気がついたか」

 声のする方を見ると、ふくれっ面のスウィートストロベリーが腕と脚を組み、ソファーに座っていた。一瞬裸に見えたが、目を凝らすと服は普通に着ていた。しかも、さっきとは違う服だ。部屋着のような緩いTシャツとハーフパンツ。こいつ、どこにこんな着替えをもってたんだ? あのランドセルに詰め込んでんのか? などと考えていたら、彼女は何か勘違いしたのか、ちょっと申し訳なさそうに座り直した。

「記憶が混乱しているのか。まぁ、あの、えっと、わ、悪かったな」

 そっぽを向いて言うスウィートストロベリー。

「貴様は、私のことを、た、たす、助けてくれようとしただけなのに……」

 その姿を見ていると無性に頭を撫でてやりたくなったが、思ったように身体が動かない。おれはまた頭を寝かし、返事をしようとする。と、首に違和感があった。

「なんだ……これ?」

 首に手を当ててみると、なにか機械のようものが巻き付いていた。

「それは事案レベル2の強制矯正装置だ」

 きょうせい、きょうせい、そうち? なんだその青いロボットの秘密道具的なのは……

 スウィートストロベリーは少し躊躇った後、真剣な表情で説明し始めた。

「私がボタンを押すことにより、電流が走るようになっている」

「バラエティ番組の罰ゲームかよ!」

「その程度のレベルではないぞ。貴様の脳に信号を送ることによって、身体を自由に操作することもできる」

「ラジコンか!」

「言っただろう。ロリコンに人権はない。貴様を強制的に矯正する権利が私にはある」

 なんてこった。これじゃ奴隷のようなものじゃないか……

「あ、でも、今回のは勘違いだったんだから、外してくれよ。俺はお前を助けたんだから」

「無理だ」

「あー、そうだよなー、やっぱ無理、無理ーーーーーーーー!? なんで!?」

「事案レベルを引き下げるためには手続きが必要だ。最低でも1ヶ月はかかる」

 一ヶ月……その間、この恐ろしい装置を首にはめたまま生活しなくちゃいけないのか。

「だが、案ずるな。貴様が正しい行動を取っていれば、私がボタンを押すことはない」

 そうだな、こいつの機嫌を損ねなければいいんだ。

 こいつの機嫌を……


 今日一日を振り返ってみて、一気に自信がなくなった。何回殴られ、罵倒されただろう。

 今回だって、俺はこいつを助けたつもりだったのに、間違えてボタンを押されてしまったのだ。

 いや、まぁ、確かに見るものは見てしまったのだが。

 ふいにそのことを思い出し、顔が熱くなる。

「どうした? 気分が悪いか?」

 そう言って、スウィートストロベリーは俺の顔を覗き込んできた。

 さらに顔が熱くなる。俺は顔を隠すようにして彼女を制する。

「いや、ちょっと、喉が渇いただけだ」

「水か、取ってくる」

「いや、いいよ、自分でやるから」

 起き上がろうとした瞬間、激しい頭痛が襲った。足元が定まらない。

 そのまま俺が倒れそうになった時、

「危ない!」

 スウィートストロベリーが俺の身体を支えようと腕を回す。しかし、彼女の力では俺の体重を支えられるはずもなく、二人一緒に床に倒れこんだ。


 俺と彼女の顔は数センチのキョリにあった。吐息が顔にかかる。

 馬乗りになるような形で、俺は彼女の身体に覆いかぶさっていた。

 俺は身体を動かそうとする。が、力が入らない。むしろ負荷をかけられた身体は余計に力を失い、彼女の体温を肌で感じられるほど密着してしまった。


 どれだけの時間が経っただろう。その時間は一瞬とも永遠とも感じられた。

「ただいまー」


 ボトッ


 静寂を打ち破ったのは少女の声と、床に落ちる鞄の音。

 かろうじて動く頭を動かし、その方向を見ると、そこには今まで見たこともない、何かとてつもなく恐ろしいモノを見てしまったかのような表情の沙耶がいた。

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