線
俺が学校に来て勉強と友達と遊ぶこと以外に、無意識にしていることがある。
それは人間観察。
けど、たまにいる「趣味は人間観察です」と、クラスの一番最初の自己紹介のときに言う奴のそれとは少し違う。
俺は自分が興味があると思った人間にしか、興味がない。クラスに1人か2人、いや3、4人はいる普通じゃない奴。それはいい意味でも悪い意味でも、だ。
普通じゃないというのは、他の高校生に比べて何かが違うという意味で、他人の色とはまるで違う、個性にあふれている人間が、普段どんなことを考えて生きているのか、そこに興味がある。
そんな普通じゃない人間の観察を、俺はいつも無意識のうちにしていた。
それと、もう一つ。
人間関係の変化。思春期女子にはよくある、いつも一緒にいる友達がいつの間にか変わってること。
俺はそれに気づいてしまうし、なぜ友達関係が悪くなったのか、その原因が自分でも嫌なくらいに気になって仕方なくなる。
そう考えると、俺は興味がない人間のこともよく見てるってことになる。結局、人間観察を趣味と語る奴と同じってことだ。
高校生活ももう2年目と3か月が過ぎようとしていた。
季節は春とも言えず夏とも言えず、寒くもなく、暑くもなく、微妙な気候の月だった。
そろそろ梅雨が近づいている。
そんな月の始めの頃、くじ引きで席替えをした。
黒板に描かれた番号がふってある座席表に、自分の引いたくじの番号と同じところに名前を書いていく。
窓側から二列目、後ろから2番目の席だった。
俺の左隣、窓側の席に描かれた名前を凝視する。
あいつだ。