エピローグ 子
「ずずずず」
部屋の中にお茶をすする音が響き渡る。
「ふ~、やっぱお茶は日本茶よね」
湯飲みを持った骸骨は感慨深げにそういう。
「おい、キリ。何でお前が人の家でくつろいでいるんだよ?」
「くつろぐというより居座ってるといった方が正解かな」
「なおさらタチが悪い」
黄泉路が元の身体に戻ったと思ったら今度は神様のキリが家に居座ってきた。
鈴はオカルト好きだから骸骨が家に居座ることに反対しなかったし、母さんも当然のように反対しなかった。むしろ賑やかになると喜んでいた。
二対一ということで結局キリは家に居座ることになった。
「だってしょうがないでしょ。あの子の願い事叶えるために久々に働いたから疲れちゃったのよ。だから少しはのんびりと過ごさせてよ」
「お前、本当に願い事を叶えるために働いたのか?」
この前会った時は若い身体で遊びたいとか言ってなかった? ってきり武道館のコンサートだってたまたまだと思ってた。
「まあ一応私を頼ってきてくれたわけだしね」
「やっぱ奇跡の力を使うと疲れるのか?」
「あの子の身体の時には奇跡の力を使ってないわよ。そういったものに頼って願い事を叶えるのは本人のためにならないでしょ。だから私はコツコツと毎日地方ロケをいってきたのよ」
「ふ~ん。で、本音は?」
「地方のグルメロケで美味しいものを堪能してやったわ!」
「やっぱり」
珍しく真面目なことを言うと思ったらそんな魂胆だったか。
「でもそれで実際にCDとかグッズとかの売上だって伸びたのも真実だからいいじゃん」
そういえば昔読んだ本にテレビでに出演する時間が増えるほどCDの売上も伸びるみたいなことが描いてあったな。本当かどうか知らないけど。
でも神様はそれを狙ってやってたのかそれとも偶然なのか。
にしても黄泉路が武道館でコンサートをやって二週間か。
ウワサじゃコンサートは成功だったらしい。そのおかげで黄泉路は忙しいらしい。
だから鈴がもうすぐ夏休みだから黄泉路に会いに行こうっていっていたな。
「キリちゃん、アニメ見ていい?」
いつものように魔女の格好をした鈴がテレビを見ていたキリに確認する。
「いいよ」
フランクに答えるキリ。なんというか神様の貫禄はない。というか家に馴染みすぎだ。
三人でアニメを見ていると急に玄関のドアを叩く音が聞こえた。
ドンドンドン。
まるで借金取りみたいな叩き方だ。
「こんな夜遅くに新聞の勧誘か?」
母さんは仕事でいないんだけどな。
神様に行ってもらって新聞の勧誘員をビックリさせて追い返すのもいいけど、あいにく神様はアニメに夢中だ。神様のくせに俗物なやつだ。
鈴に行かせるわけにいかないので仕方なく俺が出る。
「フハハハ! 我が兄弟よ。今宵も町の平和を守ろ――」
ドアを開けると全身青タイツに赤いヒーローマントを羽織った不審者がいたのですぐさま閉める。
「ぬぉ! な、なにをするのだ兄弟」
ドンドンとドアを叩く横島。
二週間ぐらい前からなぜかあいつは俺のことを兄弟と呼ぶ。非常に迷惑だ。それに学校でやたらと絡んでくる。ただでさえ学校でクリスが絡んでくるだけでも勉強できないのにあいつまで絡んでくると騒がしくしょうがない。あまつさえ家まで押し掛けてくるとかなんなのあいつは。
「兄ちゃん、誰か来たの?」
鈴がドアを叩く音が騒がしくて心配になってきたみたいだ。
「なんでもない。新興宗教の勧誘みたいだ」
と適当なことを言って鈴を落ち着かせて部屋に戻らせる。そして俺はすぐさま警察に通報した。
警察はすぐにやってきた。
「通報があったから来てみれば、またお前か」
「こいつが最近噂になってる変質者か」
「うぐ! 国家の犬めが! 我の邪魔をするつもりか。だが我には重要な使命があるのだ。ここで捕まるわけにはいかん!」
「に、逃げたぞ!」
「くそ、追うぞ!」
ドアの外が一時騒がしくなったものの、すぐに静かになった。
これでやっと落ち着けると思ったのもつかの間、またドアをガンガンと叩く音がしてきた。さっきよりも叩く音が大きい。
「いい加減に――」
しろよ、と言おうと俺が玄関のドアを開けると、いきなり胸ぐらを掴まれる。
「ちょっとあんた、あの骸骨どこにいるか知らない!」
いきなり怒鳴りつけるように言ってきたのは、ツインテールの美少女。
「よ、黄泉路。何でお前がここにいるだよ?」
目の前にいるのは骸骨じゃなくてアイドルとしての黄泉路ミヨだ。こうやって骸骨じゃない状態で話すのは初めてだ。
「ママがこっちに用事があったから付いてきたのよ」
相変わらず偉そうな態度の黄泉路。
「そっか」
「それよりあの骸骨知らない? 前にいた祠にいないんだけど」
「あいつがどうかしたのか?」
「どうかしたじゃないわよ! あいつがバクバク食べたせいで三キロも太ったのよ。どうしてくれるのよ」
そりゃグルメロケに行ってたらしいからな。それに喫茶店では一人でケーキを四個も食べていたし。
でも、
「太ったのか? そんな変わってないように思えるけど」
「えっ! それって遠まわしにあたしが可愛いって言ってるの!? べ、別にあんたのためにダイエット頑張ったわけじゃないんだからね」
顔を真っ赤にして言う黄泉路。
別に褒めてないけどな。
「骸骨だったら――」
「待って!」
俺はイエスを連れてこようと家の中に入ろうとすると黄泉路が俺の服の袖を引っ張る。
「骸骨も探してたけど、実はあんたに会いたくてきたの」
「俺に?」
何か気に障る事でもしたのか?
「うん」
黄泉路は恥ずかしそうに頷く。
「あんたには色々助けてもらったでしょ。だからそのお礼がしたくて」
「お礼?」
まさかお礼参りか? 骨だったときに色々言ってたからな、なんてことを思いながら疑問を口にすると、黄泉路は俺の服を引っ張ってきた。
「うおっ」
引っ張られた勢いで前のめりに倒れそうになると、そこにすかさず黄泉路が頬っぺたにキスをしてきた。
「えっ?」
あまりのことに思考回路がショートしそうになる。
「あ、あたしにキスされるなんて名誉なことなんだから感謝しなさい」
恥ずかしそうに俺から目を逸らす黄泉路だったが、
「本当にありがとね」
と言ってはみかみながら笑う。
その姿はとても愛くるしくて可愛らしかった。俺はそんな彼女の笑顔を守ってやれて本当によかったと思う。
というわけで「骨まで愛して!」はこれで終わりです。
続編は考えていませんが気が向いたら書くかもしれません。
本作に最後までお付き合いしていただきありがとうございました。
面白い、と思ったら評価や感想を頂けたら嬉しいです。
こまめに他の作品を投稿していく予定なので気が向いたら読んでもらえるとありがたいです。
ではでは!




