閑話
目を開けるとそこにはあたしの顔があった。
骸骨じゃなくてちゃんと皮膚もある見慣れたあたしの顔だ。
「……鏡か」
目の前にあった顔は鏡に映されたあたしの顔だった。
そう、あたしは元の身体に戻ったんだ。
「ここは、楽屋?」
周囲を見回して場所を確認する。
「そっか。今からコンサートなのね」
コンコン。
楽屋をノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
あたしが返事をするとドアが開いた。やってきたのは黒いスーツを着たすらっと背の高い女性。
黄泉路レン。
あたしのママだ。
「ママ!」
楽屋に入ってきたママに駆けよってあたしは抱きつく。
「ちょ、ちょっとミヨ。いきなりどうしたの?」
いきなり抱きついたあたしにママはたじろぐ。
いつもはクールで無感情だけどこういったことをすると少し慌てるところがある。
「何でもないよ」
そう言ってあたしはママをギュッと抱きしめて顔をママの胸にうずめる。
懐かしいママのにおいがする。
最近は恥ずかしくてしてなかったけど昔は落ち込んだ時にこうやってママに抱きついていたっけ。
そんなあたしに、落ち着きを取り戻したママは冷静に言う。
「まったく、最近のあなたの行動がよくわからないわ。いきなり聖書の印税が私に入ってこないのはおかしいだの変な事を言ったり、仕事の合間に抜け出してどっかに行ったりしてあなたらしくない奇行が目立つわ」
「…………」
あの神め。今度会ったらまた蹴飛ばしてやろうか。
「もしアイドルが辛いなる引退する? 普通の女の子に戻って恋や遊びを楽しみたいならそうしてもいいのよ。今まで歌やダンスの練習でろくに遊んでないでしょ」
ママは淡々とした口調で喋るけど、表情は少しわかりにくいけどどこか心配そうにあたしを見ていた。
そんなママにあたしはハッキリと言う。
「引退しないよ。あたしの夢はトップアイドルになることだからね。それまで引退しない」
どんなに道のりが険しくてもあたしは登ってみせる。
「そう。余計なことを言ったわね。今のは忘れてちょうだい」
と言ってママはチラリと腕時計を見る。
「さて、そろそろコンサートが始まるけど大丈夫?」
「うん、大丈夫」
本当はリハーサルもやってないからぶっつけ本番で不安だし、心臓が飛び出そうなほど緊張してる。
だけどあたしはいつも練習をしてきた。
だから大丈夫、やれる。
それにあいつも応援してくれてる。
「よしっ」
あたしは頬を両手で叩いて気合いを入れる。
「行くわよ」
楽屋のドアを開けてコンサートの舞台へとあたしは歩きだす。




