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骨まで愛して!  作者: 木山知
3章
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閑話

 あたしは何をやってるのだろうか。

 何であたしがあの兄妹のために色々やってあげてたんだろ。

 他人のために何かする余裕なんてあたしにはない。

 あたしはあの二人よりも自分のことの方を優先して早く元の身体に戻らないといけないのに……。


 あたしはアイドルの頂点になるために小さい頃から頑張ってきた。そのために苦しい練習だって耐えてきたし、誰かと遊ぶことなんかせずひたすら努力してきた。あたしの美貌に嫉妬する連中の嫌がらせも蹴散らしてきた。

 もし一生この身体のままだったらその努力だって無駄になる。そうなったらあたしのこれまでの人生はなんだったんだろうか。

 そもそも何であたしはアイドルになろうと思ったんだろうか?


「……」


 ああ、そうだ。ママに喜んでもらいたかったんだ。

 ママも元々はアイドルだった。でもあたしが生まれたせいで引退をすることになった。だからあたしがママの夢を継ぐためにアイドルになったんだ。

 ママの夢だったトップアイドルになるために。


 でも最近のあたしはスランプだった。

 新曲を出しても売れないし、グッズの売れ行きも落ちている状態だった。それに今はソロよりもグループの方が売れる。

 かといってユニット組んで活動する気にもなれない。もちろん自分の力に自信があるのが一番の理由だけど、なにより他のアイドルなんて信用できない。

 あいつらは自分のためなら平気で人を踏み台にしようとするし、陥れようとする。それで何度危険な目にあってきたか。

 しょせんアイドルなんてそんなもんだ。……いや、女なんてそんなもんだと言った方が正解かもしれない。


 いつでも女はあたしを敵視する。


 小学校の時なんてあたしが男子を誘惑してるだなんてあらぬ疑いをかけられてクラスの女子全員と取っ組み合いのケンカになったこともあった。もちろん全員返り討ちにしてやったけど。

 でもそしたら今度はあたしに関するでまかせを流し始めた。そのせいでクラス全員から除け者にされたり、ネットで変なウワサが流れてファンが減っていくこともあった。

 すぐにママや事務所の人が対応してくれた大事にならなかったけどそういったウワサが流れるとそう簡単に拭うことができない。例えウソだったとしても一度ついたイメージはなかなか拭えない。


 けどあたしは決して屈しなかった。

 努力すれば夢は叶う。


 あたしはそれを信じてひたすらトップアイドルになるために頑張り続けた。

 元々あたしにはママと違って歌やダンスのは才能がなかった。それどころかリズム感もろくになかったし、どちらかといえば不器用な方だった。けど毎日のひたすら歌やダンスといったアイドルに必要なことを反復練習して少しずつ実力をつけていった。

 中学、高校に上がると女子が男子を引き連れてあたしを襲いかけようともしてきたこともあった。もちろんそいつらはボッコボッコにしてやった。今度は以前のようにならないように余計なこを口走らないように脅迫(お願い)もしといた。


 そして次第に人気だって出てきた。

 なのにここにきて行き詰った。世の中には努力だけじゃ乗り越えられない壁があることを痛感させられた。

 ちょうどそのときあたしはたまたまこの町のロケの途中で、山にある祠で願い事をすれば何でも叶えてくれるというウワサを聞いた。

 それであたしは早速その祠に行ってトップアイドルになれるようにお願いをした。あの時のあたしは藁にもすがる思いだった。

 でもまったく効果がなかったからその腹いせに祀られてる骸骨を蹴ってやった。


 そして急に意識がなくなって気が付いた時にはこんな理科室に置いてあるような骸骨になっていた。

 あの神だとか名乗るやつに身体を奪われてあたしはいったい何やってるんだろうか。




「最近の黄泉路ミヨって可愛いよなぁ」




 夢玄の家に帰ろうとする途中、コンビニでたむろしている男子高校生の集団がそんなことを言っていた。


「あっ、わかるわかる。何か前と雰囲気変わってよくなったよな」


「そうそう。それに人気が出てきたから急きょ日本武道館でのコンサートも決まったらしいぞ」


 と言って高校生の一人が雑誌の記事を周りの友人たちに見せびらかす。


「まじか、すっげーな」


「まあオレは前からブレイクすると思ってたけどな」


「はいはい――ってうおっ!」


 あたしが近づくと高校生の一人が驚きの声を上げた。


「なに驚いてんだ――うあっ!」


 もう一人もこっちを見てくると悲鳴を上げる。しかしあたしは気にせず質問する。


「そのコンサートの話は本当なの?」


「く、くるな死神!」


「に、逃げるぞ。会話したら命を持ってかれるぞ!」


 あたしが声を出すと高校生の集団は一目散に逃げて行った。なぜか夢玄と会う前よりも恐がられた。


「あたしがその黄泉路ミヨなのに……」


 姿が違うだけでこんなにも扱いがひどくなることを改めて実感した。

 あたしは男子高校生が落としていった雑誌を拾う。

 雑誌の表紙には『今人気のアイドル黄泉路ミヨ 武道館でコンサート決定』というタイトルが書かれていた。

 武道館でのコンサートはアイドルやアーティストにとって憧れでもあり目標でもある。あたしだってトップアイドルになるための目標の一つだった。


「でも皮肉よね」


 あたしが望んでいたトップアイドルへの願いがこんな形で叶えられるなんて。




 結局あたしってなんなんだろう?




 あたしの身体が別のやつと入れ替わっただけで人気が出るなんて……。

 だったらあたしの存在っていらないじゃん。


「バカみたい」


 あんなに必死になって頑張ってきたのに。これからあたしはどうしたらいいんだろ。

 ……。

 …………。

 ………………。


「おい、先に帰ったくせに何で俺らより帰ってくるのが遅いんだよ。もう夕飯はできてるぞ」


 気が付いたら夢玄の家に帰ってきていた。


「んっ? どうした? なんか元気がないっぽいけど」


 夢玄は心配そうにあたしを見てくると、恥ずかしそうに頭をかきながら言う。


「お、お前には今日のことで借りがあるし、お前が元の身体に戻れるように俺もなるべく協力するから元気だせよな」


「……いい」


「えっ?」


「あたしはもう元の身体に戻る気はないから」


 どうせあたしが元の身体に戻ったってトップアイドルにはなれないのだから。

 それならいっそ骸骨でいた方がいいに決まってる。

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