同期同室
二話目!
「おーい、穂高ー。起きろーー」
同室で同期な親友。橋本和也に起こされた俺、穂高蛍はむくり、と体を持ち上げた。
ここはクリーチャー駆逐部隊所属者用の寮だ。子供が全人口80%を占めるこの世界では勿論、親無し、家無しが多い。
だからこの寮は常時満員。おかげで俺はムサい男と同居する羽目になっている。
「あ゛~~今何時だ? ムサい男略してムサ男」
「永遠に眠ってろ。嫌起きろ」
「どっちだほごごごごご!!」
和也に踏み続けられ、俺はしぶしぶ起き上がった。
「あたた……今日はなんかあったっけ?」
「別になにも」
となると、今日は暇か。いやいつも暇か。いいねえこの仕事。
「仕事があれば死ぬほど忙しいけどな。死ぬときはマジで死ぬし」
「あーーー。もー。もー嫌だ! 寝る! 仕事が無いときは寝る寝る寝る!!」
再び布団を被る。
「駄目だ。今日は食料買いに行かねえと」
「うげ……いってらっしゃい」
「お前も行くんだよ! お前の力貸せ!」
再び蹴り潰される。無駄にパワーあるからりやめてくれ。
「あのなあ、お前は移植して、蹴る力強いんだから蹴るのやめてくれ。痛い。無駄に痛い痛い痛い痛いいっっつあい!!」
「知るか。起きないでずっとぐーたらしてるお前が悪い」
汚物を見るような目をする和也。よく見ればすでに着替えが終わってる。さっきまで寝巻きだったのに相変わらずキビキビ動く奴だ。
「うるせえよ。お前は逆に動かなすぎだ」
かくいう俺はいまだに布団にしがみついている。だって寒いもん。
「でろ!」
「んいー! 嫌だー!!」
「出ろっつってんだよ!」
「イヤイヤイヤイヤーー」
「あああああああああああーーーーーくそ! きめえんだよ!!」
和也は何を思ったが俺が包まってる布団を蹴り飛ばした。
そのまま俺入り布団は家の……より正確に言えば六階建ての寮の六階のベランダから飛び出した。
「おいいいいい!! 死ぬ!死ぬぅぅぅぅぅぅ!!!」
眼前に迫る世界で一番でかい鈍器。地上が迫る。
俺は急いで包まっていた布団を脱ぎ、下においてクッションにして、体に力を込める。
徐々に、そして一気に体が変異する。健康的とはいえない白い肌から、一瞬だけグロテスクな皮膚へと変わり、また元の白い肌に戻る。
そして、背中からは先端が尖った蜘蛛の脚のようなものが一気に八本生える。服が破れるからあんまり使いたくないんだけどな。
後は急いで地上に脚を突き刺すだけ。突き刺して、ゆっくりと体に負担を与えないように速度を落とす。この間2秒。
「おー相変わらず速いなお前」
「てめえ和也! 殺す気か!!」
速度を殺しきり、地上にクッションを挟んで降り立った俺は振り向きざまに六階のベランダから手を振っている和也めがけて脚を伸ばす。
伸縮自由な脚は勢いよく伸びながら和也の頭目掛けて伸びていく。
「はっ!」
和也は鼻で笑う。少し飛び上がり、頭めがけて伸びていた足を踏みつぶした。
「ちっ」
「おい! 結構マジで殺す気だったな!」
「当たり前だろ!」
「ぶっ殺す! おまえ絶対ぶっ殺す!」
ギャーギャー喚く和也を無視して、俺は玄関へと。
「またあんたかい?」
「ウップス」
戻ろうとしたらそこには寮母のトメさん。通称化け物婆が仁王立ちしていた。
「なななななななにがですか? 俺は別になにも」
「あそこを壊したのあんただろ?」
「oh……」
どうやら部屋に帰れるのは当分後になりそうだ。