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後日日誌

最終回!

 壁の外に出る。そう決断してから俺らは走り抜けながら崩壊した街を駆け抜けた。

 出入り口である大門までの道には病院があり、そこに立ち寄った。

 立ち寄って、食べ物を漁り、ケガ人は包帯などで救急処置を執り行い、俺はというと、あかりの生命維持装置を探し、それをあかりからの指示の元、再びつけた。


 なぜ付け方を知っているのか聞くと、一度見たから。と軽く答えられてしまった。

 ホントに頭いいんだな。

 つけた生命維持装置はあかりと一緒に担ぎ上げた。電力には炎熱刀のバッテリーを利用した。これでもう、武器は無い。しかし蜘蛛の脚はある。

 生物兵器クリーチャーに対抗する術が、もうこれしか残っていない。

 本来ならもう一つ対抗する脚があったのだが、それは自分の手で消してしまった。

 だから。

 その償いではないけれど、外に出たら綺麗な場所に埋めてやろうと思っている。

 そこからは大門目掛けて走りながら、時々あるシェルターの中から一般を救助して、それを囮にして、俺達は逃げた。逃げた。必死に。最低に。逃げた。

 白蛇は追っては来なかった。しかし、でくわした時には喜んで生存者を咀嚼した。

 壁の外に脱出したときには助けた人の十分の一ほどしか残っていなかった。

 しかし脱出は出来た。皆で喜びながら、俺達は道なき道を歩いた。近くに他の街があることは知っているからだ。

 そこ目指して進む道中の丘からさっきまで自分達が平和に暮らしていた街を見下ろすことが出来た。

 街は燃えていた。

 ここからも白蛇がよく見えた。

 白蛇は自分の尻尾に顔を埋めて丸くなっていた。その円の中には炎は届いておらず、人が匿われていた。

 大事な餌を守っているようだった。

 まだあんなにいたんだ。と誰かが言った。

 うん、そだな。

 助けられないけど。

 その反対側は、とても青々しい綺麗な風景が広がっていた。

 人の手が消えてなくなった世界。それはとても美しく、イらないものを排除した美しい絵画のようだった。

 俺はそこにもう一人の脚を埋めた。

 その前で手を合わせる。

 頼むから、化けてでてこないでくれ。と懇願して。

 後ろを振り向くと、脱出した他の人たちも手を合わせていた。

 しんみりした雰囲気を壊すように、一体の生物兵器クリーチャーが迫ってきていた。

 お馴染みのキメラだ。

 それに脚を突き刺し、撃退。一之瀬の誘導に従って避難民一行は大名行列のように、並んでついていった。


 三日三晩歩いた。寝る間も惜しんで、飢えを無視して、渇きを殺して、途中で倒れた仲間を無視して歩いた。歩いた。

 その間に生物兵器クリーチャーに襲われた回数は三回。十分の一に減っていた避難民も、更に減って現在三十七名。戦闘員は六名+僕で七名。

 全員心身ともに崩れ落ちてしまいそうなぐらい、ひび割れた状態で歩き続ける。

 野を越え、山を越え、谷を越え、丘を登ったところで。

 街が見えた。

 街というには、余りにも辺鄙でボロボロな街が見えた。

 自分たちかちょっと前まで過ごしていたあの食料が買えて、服が買えて、部屋があって、勉強ができて、布団があって、壁があった快適安全な街とはまるで真逆な街が、見えた。

 こうして俺たちは生物兵器クリーチャーに敗れ、壁のある快適で現代的で安全な生活から解放され、壁のない不適で廃退的で危険と隣り合わせな生活に──。


 と、そこまで筆をはしらせると後ろからの呼び声がした。

「穂高蛍! 今から相手側と会合する。君たちにも来てほしいんだが」

「……ケイ、呼ばれとるで」

「わーってるよ。あんましゃべんな。バッテリーを無駄に消費するだろ」

 電力だって、この街じゃあ貴重な資源なんだ。

 こう考えると、炎熱刀みたいなめっちゃ電力を喰うアイテムを使えた辺り、俺たちは中々待遇のいい生活をしてたみたいだな。

「ったく、せっかく日記を書いてたのに」

 今にも壊れそうな机の上に置いたノートを睨んで俺はボヤく。

 それを、背中に背負ったあかりは不思議そうな顔で見ながら。

「……ケイって日記書くんやな」

「意外か?」

「……うん」

「こーゆうの書いてみたかったんだよ。この後さ、この街が崩壊した後、訪れた旅人とかがさこの日記みたら面白そうだなーとか考えながら書いてんだ」

「……不安になるような事を言わんでや」

「かゆい うま」

「……それ書いたら相手側も困惑するやろうな」

「いい気分……ひめい……おち着く………たのしい……オレも……だれか殺……したい……」

「……それ元ネタ知らんのが見たら、猟奇殺人かと勘違いしそうやな」

 5の日記やったっけ? とあかりは首を傾げる。こいつ、中々やり込んでるようだ。

「そしてこの日記はこの引き出しの中に……これを開くと」

「爆発するんやろ」

「……ネタバレすんなよなー」

 ケラケラと、俺とあかりは笑いあい、そろそろ向かわないと一之瀬に怒られそうなのであかりを縛る蜘蛛の糸を縛り直し、部屋を後にしようと。

「あ、そうだ」

「どしたん? まだ書き足りないんか?」

「うん、あと一文だけ」

 そして、俺は最後の一文を殴り書きした。

 ──このクリーチャーの蔓延る世界でも、俺たちは生きている。

はい。見て分かるとおり打ち切りエンドです。

思いつきで連載するもんじゃないですねぇ。ここまで私めの駄文を読み切っていただきありがとうございました。

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