夜這い
ひっそりと静まり返った屋敷の中、私は蝋燭を片手に持ってコソコソとハイネのいる屋根裏部屋へと向かいます。もう片方の手に持っている、イメルアが彼女の部屋から盗んだ装飾品の存在を確かめるようにしてキュッと優しく握りしめながら。
失くしては大変ですからね。
―――――――
「ハイネ、ハイネ?私です。開けてくださっ……!?」
今は夜分で、お忍びであることもあったので、私はコンコンと小さくノックをしてから控えめな声でハイネにドアを開けるように促そうとすると、中からガタガタガタっと物が落ちる音やら何やら不審な音がしたので私は驚きました。ハイネはそんなお転婆ではなかったはず。そもそも、一人でドタバタと変なことをするような子ではないので、
ま、まさか、不審者!?
といった風に、真っ先に不審者侵入説が頭に浮かびました。
それに動揺していたので、ハイネの部屋が侵入しにくい屋根裏であることも忘れて、私は慌ててハイネの無事を確認しようとドアを開けました。
「ハ、ハイネ、大丈夫!?」
「……っ、クロエ!大丈夫よ、そんなに慌ててどうしたの?」
私が持ってきた蝋燭と月明かりで照らされたハイネは、少し青ざめているように見えました。そして、いつも小綺麗にしてある部屋はかなり散らかっています。一体、何があったというのでしょうか。
「ハイネ、何があったのですか?というか、どうしたのですか?」
「っえ、別に何もなかったの、うん」
「何もないって……」
一瞬見えたハイネの動揺する姿に私は、自分が握りしめている装飾品の存在を思い出します。そこで、ハイネが隠している"こと"が見えました。おそらくハイネは大切な形見がなくなったので正に言葉通り部屋をひっくり返してまで捜したのでしょう。そんな状況で私がやってきて、心配をかけまいと隠すことにしたのでしょう。
「ハイネ。一人で抱え込むのは止めてください」
「えっ……一人でなんて抱えてないのですよ?」
「嘘は、やめてください。嘘とばれる優しい嘘は、かえって相手を心配させますよ?」
「そんなのじゃないの……っ?!」
否定しようとしたハイネの目の前に私が差し出したのは形見である装飾品。ハイネは驚きに目を見開いています。
「ハイネ、これは私の愚姉があなたの部屋から盗ったものです。本当に、すいません」
「……ありがとう、クロエ」
見つけた安堵感からか、装飾品を胸元に寄せて、ぎゅっと握りしめています。その姿を見ると、私は何もしていないのに罪悪感が沸々とわいてきました。イメルアは本当に余計なことをしてくれました。この報復はいつか絶対に、必ず、最低でも今までの分は返してやります。
「それより……部屋を片付けましょうか」
「ええ、本当にありがとう、クロエ」
私とハイネは顔を見合わせてプッ、と笑いあいました。いつまでも、たとえハイネが王子様に見染められて遠くの存在になったとしても、今この瞬間の温かい関係がずっと、ずっと、続けばいいです。なーんて、私はハイネとの不確かな生易しい未来を思い描くのでした。
変わらないものなんて、滅多に存在するものではないと、知っていたけれど。
何か怖いフラグを建設したクロエちゃん……。
そしてサブタイトル……え、ええ、狙ってなんかいませんよ!




