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洗濯

この世界の洗濯は、一部の貴族の家は家に備わっている井戸を使います。

平民は共有の井戸を使っています。

――――――――



「……よいしょ、っと」



 ユーシアはマリレイに命令された通り、洗濯物(継母とイメルアのも)を取りに行き、丁寧に下ろしました。


 最初のころは洗濯の仕方など知らず、普通に洗っていたところを見られ、もっと丁寧に扱いなさいよ!あなたの粗悪な服とはワケが違うんだからね!とどやされてからは、必要以上に丁寧に扱うようにしているのでした。本当に性根が腐ってる人達です。


「つめた……」


 季節が秋で、朝ということも相まって水がいっそう冷たく肌に刺さるように感じるのか、ユーシアは小さくそう洩らしました。



「はぁ……」


 ユーシアは憂いを秘めたため息を零します。その時、私ことルーシーは漸く声をかけられるチャンスを手にするのです。


「ハイネ、今日も朝から大変ね」


 私とユーシアはお互いにハイネ、クロエといった所謂(いわゆる)ミドルネームで呼びあっていてとても仲が良いのですよ?あ、ちなみに私の正式な名がルーシー・クロエ・アナンスです。こう表すのは非常に不服ですが私の母とこの子のお父様が再婚したので本当はルーシー・クロエ・リルアドナなのですが、私は再婚など認めていないので社交の場以外では家名はアナンスだと名乗っています。



「クロエ……!ちょ、あなた、何しようとしているのですか!?」

「え?何って、洗濯ですよ?見て分かるでしょうに」


 平然と答える私は、ユーシアの横を陣取って自分の服の洗濯をしているだけです。まぁ、自分のが終わったら他のもしますけど。


「私がやりますから、お願いですからやめて下さい!クロエの手が荒れてしまったらどうするのです!?」


 ユーシアは尚もバシャバシャと洗濯し続けている私に制止の声をかけ続けます。自分の手こそ荒れてているのに。


「もー、ハイネ五月蝿い。あの人達が来ちゃうよ」


 私は敬語を使うのをやめ、五月蝿いとでも言わんばかりの表情をありありと顔に浮かべます。そしてあの人達とはもちろん意地悪な母や姉たちのことです。



「あ、すいませ……ってそういうワケにはいかないのです!クロエは、もっとそういうのに気を遣わなければなりませんのです!」

「何を言ってるの、ハイネは」

「す、すいま「はい、NG……おっと間違えました、禁止です、禁止!私に対して本当に悪いことをしていないのに謝るのは」


 私は二回目も謝りの言葉を口にしようとしたハイネを禁止、と遮りました。するとハイネは困ったように、それでいて嬉しそうに少しだけ微笑みます。


「絶対禁止ですよ。それに、私がそんなことで怒ると思うのですか?いつも言っていますけれど、そんなに器は小さくないつもりですよ?私」


 私は心外そうにハイネに言います。ハイネには素で接しているので、そんな短気とか思われてたら防弾ガラスのハートがブレイク……なんでもありません。



「ク、クロエが、クロエの器が小さいだなんて思ったことありません!クロエは、私に唯一優しくしてくれる、可愛くて最高の、大切な家族なのですから!」

「私にとってもハイネは大切な家族ですからね、悩み事があったら真っ先に私に教えて下さいね?




勿論、恋愛相談大歓迎よ?」



 真っ赤な顔で、聞いているこちらが恥ずかしくなるような台詞を言い切ったユーシアに、私がいたずらっ子のように意味ありげに微笑むと、ハイネは顔を先ほどよりも真っ赤に染め上げます。最も、私は恋愛なんてしたことないので的確なアドバイスは出来ないでしょうけれど、裏で根回しする程度の手伝いは出来るでしょう。詳細は割愛しますけど、これでも、私は顔が広いですから。


 あと、恋愛モノの本とか読んだこともありますし。それに、この現状はシンデレラにそっくりなので、ユーシアが恋するのはどう考えても王子様でしょう。ユーシアが王子様と挙式をあげれるように奔走するのもまた、楽しみですし。


「お互いさま、なのですよ。クロエにとっての私は力になれないと思いますが、相談や愚痴ならいつでも聞き手になりますから」

「ハイネ……」


 ……めっちゃ可愛い!と声を上げてハイネを抱き締めたことは言わずもがなです、まる。





 そんな感じで上手い具合に話を逸らしたことに気付かれ、またまた手が荒れると騒がれるのは、また別のお話。




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