プロローグ
とある世界、とある国、とある屋敷にルーシー・クロエ・アナンスは生を受けました。
父はルーシーが生まれる前に亡くなり、とても醜い心を持った母と姉達に囲まれてルーシーはすくすくと育ちました。そしてルーシーもその家族の中で育ったのですから醜い心
ではありませんでした、幸いにも。なぜなら彼女には前世の記憶があります。ソレはそのままルーシーの経験となり、知識となったのですから。そのおかげで心は醜く染まりませんでした。ですが達観しすぎた精神は時に彼女を苦しめ
なかったようです。彼女は飄々と折り合いをつけてソレと付き合って生きていましたから。
そんな彼女の母は、どうやら再婚するようです。姉達は大賛成しましたがルーシーだけは大反対しました。ルーシーには母と姉達がそこの財産を根こそぎ使い込み、すべてを吸い上げる。そんな相手側の恐ろしい未来がチラついていたからです。
しかし、彼女の反対は虚しくも掛け合ってもらえませんでした。それもそのはず、母がとられてしまうと恐れた幼子の言い分として都合のいいように解釈されていたのですから。
再婚してから4年がたった時、相手側の父が亡くなってしまいました。そして母と姉達が本性を現し、相手側の連れ子をいたぶり始めた時に、気づいたのです。
―――もし自分という存在がなかったらこの現状は、まるで
シンデレラじゃないか、と。