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「ようせいのリリィさん。いんちょうせんせいがよんでいるからバイバイ!」
奥の部屋から院長先生が顔を出して手招きをしています。
どうやらリリィが見えていないようです。
優しそうな院長先生も大人。純粋な心はもう薄れてしまっているのでしょう。
「さよなら。ララ」
リリィに背を向けて勢いよく駆けて行くララ。
名残惜しそうにその小さな背中を見つめる妖精は数分前に交わした約束を思い出していました。
『ねぇ、ララ。一つだけ約束して欲しいことがあるの』
『やくそく?』
『そうよ。聞いてくれる?』
『うんっ!』
『私のことをリーフ以外にお話しないでほしいの。妖精、リリィがいることは三人だけの秘密よ』
『ひみつ?どうして?リリィはみんなとおともだちになれないの?』
『そうよ。私はララとリーフとしかお友達になれないの。だから秘密にするって約束してくれるかしら?』
『うーん。わかった!ひみつってやくそくする!リーフともやくそくする!』
『ありがとう。ララ』
リーフの姿を確認出来たリリィは安心して森へ帰りました。
ララという可愛らしい人間と友達になり、すぐに二人が森に遊びに来ると思っています。
しかし、何日経っても二人は現れません。
その間にも人間はリリィの生命の源でもある木々を殺し、煉瓦で土を隠し、人間の領域を広げていきます。
雪が降りそうで降らない日々が続き、リリィはとても焦っていました。
雪と共に木と眠りに就く。
この森で生まれた時から何百年も続けていたことです。
リリィが眠っている間に森が消えてしまっていたらリリィという妖精は生き場を失ってしまいます。
この世界の人間が自然を殺さずに暮らせる環境が出来ればたくさんの命が救われる。
答えを出すのは簡単なことですが実行するにはとても難しいことです。