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森が生きていた場所には大きな広場が出来ました。
小さな時計塔はリーフが授業の実習で作ったものです。
時計塔の周りにはララが小さな花壇を作りました。
この大きな広場が何のために作られたのか二人は知りません。
「仕方ない、か。悔しいな。僕がもっと大きかったら森を守れたかな?」
「そんなの分からないよ。私達は出来る事から始めればいいの。それよりリーフ。今日は花の種を植えるのでしょう?」
「……そうだね。これも運命なのかな。花の種というよりはラズベリーの実だよ」
二人は種を取り出すと丁寧にラズベリーの実を埋め始めました。
ふと、ララが独り言のように呟きました。
「妖精のリリィさんは何者だったのかな……?」
雲一つない真っ青な空。太陽の光が優しく世界を照らしています。
どこにも緑が無い真っ白な広場には新たな命を誕生させようと希望に満ちた手で作業をする少年と少女。
少年、リーフは少し考えてから少女、ララの質問に答えました。
「森の命だよ」
妖精、リリィはこの森自体だったのかもしれません。
この小さな物語はリーフとララだけの秘密のお話し。
今日も二人は命の大切さを心に、仲良く帰って行きました。