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何年か月日が経ちました。
寒い冬が過ぎ、暖かい春の季節。
リーフは院長先生からクリスマスプレゼントに貰った花の種を持ってララを連れて出かけて行きました。
泣いてばかりいた男の子の面影は薄れ、茶髪が目立つ整った顔立ちの少年へと成長したリーフ。
長かった焦げ茶色の髪は肩の上で綺麗に切り揃えられ、ピンクのワンピースがよく似合う可愛らしい少女へと成長したララ。
二人はあの時と同じように並び、森を目指してゆっくりと歩いています。
しかし、細い小道を抜け、たどり着いた先は地面が真っ白な煉瓦でおおわれたとても広い所でした。
真ん中には小さな時計塔。それを囲むように小さな花壇がありました。
「ごめんね。リリィ。僕達はリリィの生まれた森を守ることが出来なかった」
リーフは時計塔の前に膝をつき、居るはずの無い妖精に語り掛けました。
返事は無く、春風がリーフの前髪を揺らします。
ララはそっとリーフの隣に座り、話し掛けました。
「仕方ないよ。リーフ。私達は子供だったから、幼かったから、何も出来なかった。仕方ないの」
ララはリーフを慰めるように言いました。
リリィが去った後、人間の心に憎しみが増え、領土や地位を奪い合う醜い争いが始まりました。
リーフ達が産まれた街は貴族が多く住む、恵まれた環境にありました。
小さくもなく、大きくもなく、治安が良い街はすぐに大国に狙われてしまいました。
穏便な話し合いが出来るはずもなく、次々と街に攻め入る兵士。
貴族達は戦いの先頭に立ち、兵を集め、戦いましたが三日も保たずに大国の兵士に鎮圧されてしまいました。
リーフ達が住む孤児院は崩壊し、子供達は数人しか生き残りませんでした。
幼いながらに街の危機を感じ、燃え上がる孤児院をララと抜け出して森へ向かったリーフ。
二人が森に着いた頃は既に森は焼け、黒い煙におおわれた野原のようになっていました。
大国に負けてしまったただの街は国の一部として支配され、たくさんの命を奪われました。
幼かったリーフとララは国民として受け入れられ、孤児院と言う名の軍事学校に入学させられてしまったのです。