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台風一家  作者: 黒湖クロコ
本編
31/43

10章の3

「イクさん、落ち着いた?」

「申し訳ございません」

「あー、もうそれはいいから」

 二人して正座しながら、俺はイクさんの背中を軽くたたく。怪奇現象が怒ったら、話も進まない。というかもう一度怪奇現象が起きる可能性が高い。時計の時間は7時をまわったところだから、まだ人は来ないだろうけれど、見られるのはマズイ。


「そう言えば、鬼塚が七不思議にも入らなくなったって事は昔は違ったの?」

「はい。生徒が変わるたびに、七不思議も変わっていきますから。以前はたしか鬼塚も七不思議に入っていたはずです。他にも今は切り倒されてしまった『狂い桜』なども七不思議だったと思います」

 なるほど。切られてしまえば、もう怪談とは成立しない。そうやって、七不思議は変わっていくのだろう……ん?

「ちょっと待って。いつから鬼塚は七不思議から外れたの?というか、何で外れたの?」

「さあ?私も全ての期間の七不思議を知っているわけではありませんから。でも最近までは七不思議だったように思います。鬼塚から力が消えたのも近年だった気がしますから。七不思議から外されたのもその所為じゃないですか?」


 つまりは、鬼塚から鬼が居なくなったから七不思議が変わったという事だ。俺が今まで転校した学校はこんなに不思議が羅列された学校はなかった。イッタンも鬼に関わり深いと不思議な事が起こるような事を言って行った気がする。つまりこの学校に七不思議が多いのは鬼の力が影響していて、今もこの学校に鬼はいるんじゃないだろうか?

「イクさん。鬼塚の怪談があった時の怪談と今の怪談で違うところって何?鬼塚があったって事は、今の怪談でなかったものがあるんだよね?!」

 怪談鬼塚がなくなって、代わりに増えたもの。その辺りの新しいものが鬼の引っ越し先な気がする。

「えっと。そういわれても、本当にどんどん変わっていってしまって……今は何が残っているのかも全部は把握していませんから……」

「俺が知っている今の七不思議は『首のない女子生徒がいる体育館』、『ひとりでにピアノがなる音楽室』、『絵が変わる美術室』、『開かずの科学準備室』、『未来が見える渡り廊下の鏡』、『天井を歩く靴』、『夜は一段増える十三段目の階段』の七つ。どう?聞き覚えがないのってない?」


 その中でも『未来が見える渡り廊下の鏡』は先輩が卒業記念で寄贈したものっぽかったから新しい方だろう。『絵が変わる美術室』も今は校長室に飾られているが、生徒が描いたものと考えると、それほど古いものじゃないんじゃないだろうか。『開かずの科学準備室』はちょっと無理やりだったし、空白にとりあえず入れてみた感もあるから無関係として――。

「えっと、ピアノの怪異は昔からいる顔なじみです」

「えっ、りかちゃん人形と知り合いなの?」

「はい。良く一緒に生徒を驚かして遊びました」

 ……それはかなり迷惑な遊びだねとは思ったが、口に出すのは止めた。妖怪には妖怪のルールがあるみたいだし、危害を加えてるわけではないから俺がいう話ではないだろう。


「他はどう?」

「天井の怪異と十三段目の怪異は新校舎が立ったころからの付き合いですから、まだ鬼塚の怪異はあったように思います。鏡は妖怪というよりも、呪具に近く意思がないので付き合いはないのですが、結構最近だった気がします」

「呪具って何?」

 何か、嫌な響きだ。

「呪いという字と道具の具の字を書いて、『じゅぐ』と読みます。いわゆる人間が作った呪いのかかった道具ですね。呪いのわら人形とか、妖刀とか、ばずびーずちぇあとかいう英国の椅子とかが似た感じのものだと思います」

 わお。響きだけじゃなくて、意味も散々っぽいね。

 ばずびーという椅子は知らないけれど、わら人形とか妖刀にいいイメージはない。というか死のにおいがぷんぷんだ。せめて白雪姫に出てくる鏡とかそういう可愛らしい例題を使って欲しかったよ。分かりやすいけどさ。


「えっと。もしかして、その鏡に映らなかったら、近々死ぬとかそういう呪い系の鏡?」

 俺には凄く不吉な記憶があった。あの肝試し思いだすと、今自分が言った事も相まって憂鬱になる。

 なんでこう鬼の話とか結構不吉な話が出ている時に呪われちゃっているんだろう。これって普通に死んでこいと言われているようなものだ。自分の運のなさが目に染みる。……俺、座敷童の家系なんだよね。何でこんなに運が悪いわけ?

 自分の過去の運の悪さを思いだし泣きたくなった。

「いえ、そのようなものではなかったはずです。そもそもややこしい手順を踏まなければ未来は見れないはずですし」

「へ?そうなの?」

 ややこしい手順も何もなく、俺らはただ覗き込んだ気がする。という事は、俺の見間違いとか?釈然とはしないが、死の呪いがかかったわけではないならば、その方がいい。というか、それがいい。それでいこう。

 俺は全てを忘れることにした。


「えっと、あ。それで、他の二つは知ってる?」

「それらは、きっと新しい――」

 ドンっと地面が揺れた。結構大きい揺れで、俺はとっさに天井のライトを見上げた。ぎっしぎっしと、振り子のように横に揺れている。

 またイクさん?!っと慌ててみれば、イクさんも驚いたように目を見開いていた。

「えっ、今度こそ本当に地震?」

 揺れは俺が喋っている間に止まった。その事にほっと息を吐くが、何故だか背筋がぞくぞくする。何これ?


 イクさんは顔を青ざめると、ガタガタと震えた。

「な、何が。凄く大きな力が……あ、あらわ、現れま……した」

 イクさんが歯を鳴らしながら喋る。それを見て、俺は事態を理解してしまった。大きな力なんて、一つしか思い浮かばない。俺は自分の勘の良さと運の悪さを呪いたくなった。やっぱり俺、あの鏡に呪われたんじゃないだろうか。


「お、鬼がっ……」

 鬼が目覚めたに違いない。


 

 


 

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