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台風一家  作者: 黒湖クロコ
本編
10/43

3章の3

「一郎。何処いっていたんだよ」

 教室へ戻ると、他のクラスメートと話していた良が俺に気がついた。存在感は激薄な俺だが、流石に俺の前の席にいる良は気がついたらしい。

「ちょっとトイレにいってたんだ。で、そのついでに学校を探検していただけだよ」

「何だよ。探検なら誘ってくれればいいのに」

 誘ってもいいが、良は生首見たら驚くだろうか。絶対驚くよなぁ。そうなるとイクさんは紹介できない……。まあでもなるようになるか。

「うん。じゃあ、次はよろしく」

「おう」

 良は友達も多いみたいだし、俺とばかりつるむという事もないだろう。たまに一緒に探検するぐらいならば問題もない。


「そうだ。探検ついでに、一郎も入れよ」

「へ?何に?」

 入れって、部活だろうか。確か学校の方針でどこかの部活には所属しなければいけないが、できれば早く帰れる文科系に入るつもりだ。たぶん良は野球をやってたというぐらいだから運動系だろう。クラスメイトが一緒なのは心強いが、一時の感情に任せては後々苦労するのは目に見えている。特に夕食作りに弊害が出てしまう。

「肝試しのメンバーだよ」

「……季節間違ってない?」

 おどろおどろしく、良の隣にいた背の高い男子が言ったが、一瞬なんの話か分からなかった。桜が散る季節に肝試し。季節を先取りすぎてピンとこない。

「この学校って、七不思議がちゃんあってさ。入学してすぐに肝試しするのが慣行行事だって、野球の先輩に聞いたんだ。だからさ一郎も来いよ」

「うーん」

 肝試しという事は夜だろう。夕食さえ作りおいておけば問題はない。ただうちの家族は心配性だし、うまく抜け出せるだろうか。下手したらついてくると言いかねない気がする。


「ちょっと、肝試しなんて止めなさいよっ!!」

 悩んでいると、甲高い少しヒステリックな声が鼓膜を打った。

「何だよ、和栗。入れてもらえなくてさみしいのか?」

「違うわよ!!私は肝試しなんて子供じみた事は止めなさいって言っているの。幽霊ってのは、そういう事をしている時ほど動きが活発になるのよ」

 ……和栗さんって傍から見ていると何だか中二病みたいだよな。

 本人はいたって真面目なんだろうが、周りの目が冷たくなっていくのが分かった。たぶん肝試しをやるメンバーは霊とかで怖い思いをした事がない奴らしかいない。というか世界中の大半の人間がそちら側だろう。みた事も怖い思いもした事がないものにとっては、和栗さんが騒ぐ気持ちは分からない。かくいう俺も理解できるとまでは言えないんだけど。

 それでも彼女が嘘は言ってない事は分かった。少なくとも彼女自身は嘘を言っているつもりがない。それぐらい顔が必死だ。

「何言ってるんだよ。俺らは見たいから行くんだよ。そっちから出てきてくれるなら好都合じゃん。なぁ」

 肝試しを相談し合っていた男子達は頷きあい、続いて馬鹿にしたように笑った。その様子に俺は眉をひそめる。

 確かに和栗さんは変だが、理解しようともせずに馬鹿にする姿ははっきり言ってキモイ。俺こういう奴、精神的に受け付けないんだよなぁ。やっぱり肝試しは断ろう。幸い和栗さんの脅しもあるので臆病風に吹かれた的にしておけば問題ない。

 俺がそう結論を出している間に、和栗さんの顔は徐々に強張っていった。そして口をへの字に結ぶと、きっとまなじりを上げる。

「霊は甘く見ていると、本当に怖いんだか――」


「へぇ。そうなのか?」


 どんどん悪化していきそうな和栗さんの言葉をさえぎるように、良が訪ねた。良は好奇心いっぱいな様子でどこか楽しそうだ。そこには馬鹿にする雰囲気は全くない。

「そ、そうよ。幽霊の中には祟ったり、とりついたりするのもいるんだから」

「なら和栗も来てくれれば安心だよな。確かお祓いできるって一郎に言ってたし。じゃあ和栗は参加って事で。和栗が参加するなら、他にも女子も誘おうぜ。和栗も女子一人じゃ嫌だろうし、男子ばっかじゃムサイじゃん」

 上手いなぁ。

 良はさらっと和栗さんの怒りの矛先をへし折ると、場の空気を明るいものに変えた。他の男子も、良の言葉に流されて和栗さんを馬鹿にするのではなく、女子も誘おうという話に変わっている。

「じゃあ、今日の7時に裏門前に集合な。一郎、ぼんやりしてるけど遅刻はするなよ」

「うぇ?いや、俺は――」

 止めておくよ。そう言おうとしたが、その前に良が喋った。

「お前は強制参加だから」

 えっ。何で?!

 ぎょっとして良を見たが、いい悪戯でも思いつたかのように笑っている。

「ほら和栗と仲好くなるチャンスだぞ」

「……そのネタ、まだ引っ張ってたんだ」

 和栗さんが俺を見ていたのは、俺の気配が変だからだと分かったはずなのに。良はどうしても、俺と和栗さんをくっつけたいらしい。

「それに、お前が来ないとさみしいだろ」

「良く言うよ。クラスの大半が行く感じになっているじゃん」

 これでどうして寂しいになるのか。はっきり言って、俺みたいな影の薄い人間はいても気がつかれずに終わる可能性の方が高い。

「俺達親友だし」

「いつからだよ」

 そんなのは初耳だ。

 友達にはなったと思うが、それがいつの間に親友に昇格したのか。

「何言ってるんだい、心の友よ。今この瞬間、俺は一郎と親友になれると思ったんだ」

「……それは一方通行だと思うよ。俺は特に何も感じなかったし」

「一郎ってば容赦ないなぁ」

 あははっと笑っている所を見ると気にした様子はなかった。

 良は本当に明るくて良い奴だとは思う。名前負けしてないところがなんとも凄い。それに引き換え、俺はなんて暗いんだろう。和栗さんの事も助けずに自分だけ逃げようとした。こんなのが親友なんて、冗談でもろくなことはない。

「でも俺は、本気でお前の事好きだからな。一郎って良い奴だよなぁ」

「俺の何処がっていうか、そういう冗談は止めろよ……マジで」


 つ、疲れる。

 良い奴は良い奴なんだが、このテンションは疲れる。気分は長距離なのに、誤って短距離のペースで走っているようだ。

 しかし何が楽しいのか、良はハイテンションのまま俺をかまい続けたのだった。


 


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