序章
家族とは、居住を共にすることによってひとつのまとまりを形成した親族集団のことである。また、「産み、産まれる」かかわりの中から生じた親と子という絆、そうしたものによって繋がっている血縁集団を基礎とした小規模な共同体が、家族である。同じ家屋に居住する血縁集団に限定して使う場合もあり、現代日本では直系親族を中心とする単家族のことを指す場合もある。
以上、ウィキペア抜粋。
つまり家族の条件は最低限、血縁関係がなければならない。
「……家族ねぇ」
小六にもなって、家族について作文を書いてこいなんてうっすら寒い宿題をだされて途方に暮れた俺は、困り果ててため息をついた。とりあえず、図書館にあるインターネットで調べてみたが、何の進展もない。
産み、産まれるの関係を持った人は、俺が五歳の時に死んでいる。その後は、親類の中をたらい回しにされるというお決まりの境遇だ。今の家は俺より二歳上の長男と、一歳下の次男、それと幼稚園に行き出したばかりの妹がいる。男2人からは嫌がらせをされ、母親からはダメな子レッテルを貼られているが、父親の方は俺の遠い親せきだそうで、いつも気の毒そうに俺を見ては、気を使ってくれている。それでもご飯をもらえて、寝る場所があるだけ有難いと思う。二つ前の家では、飯抜きなんて日も良くあった。
「ありのままなんて、書けるわけないよなぁ……」
書いたら二度と家の敷居を跨ぐことはできないと思う。でもそれじゃ困るのだ。
「ちょっと、お前」
「ん?えっと、なんですか?」
後ろを振り向くと、和服の女の人がいた。和服が普段着の人なんて始めてみたが、薄い桃色の着物は、細身の女の人にはとてもよく似合っている。きっと金持ちか何かなんだろうなとぼんやり思う。
「家に来な」
「はっ?」
この時俺は何を変なこと言ってるんだと思った。だって正直不審者にしか思えないだろ。
しかし数日後、俺はこの女の人に引き取られることになった。