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七 『考えて考えて』

 夜。布団の中で。

 天井を見つめながら考える。

 あの廃墟で、僕が口にしたひとつの質問。

『君は、吸血鬼なのか?』

 彼女の答えはあまりに単純で。

『ああ』

 肯定した。規定事項のように。当然に。顔色ひとつ変えずに。

 考えてみる。もしも僕が同じような質問をされたら。

『あなたは人間ですか?』

 やめた。馬鹿げている。

 僕に、そんなふざけた質問を受ける機会などあるわけもない。考えるだけ無駄だ。

 彼女は。リリンと名乗った少女は、肯定の後にこう続けた。

『だから、もう関わるな』

 だから。だから、何だと言うのだろう。

「言われなくとも、分かってるさ」 そうだ。彼女は吸血鬼だ。だから、関わらない。

 僕は異常を許容しない。そう決めている。ずっと昔に、そう決めたのだ。

「だけど、何だろうなぁ…」

 違和感が、あるのだ。

「もう、やめよう」

 考えるのをやめる。

 それでいい。これ以上踏み込む必要はない。

 僕はいつも通りの日常に戻ったのだ。あとは、せいぜい夜は出歩かないよう気をつけて、普通に暮らせば良い。

「そうだろう?リリン」

 言ってから、もう一度口の中でその名前を転がす。

 リリン。その響きは、不思議と心地良かった。



◇◇◇◇◇



「何かあったのか?」

「うん?」

 日野の顔を見返す。

「何だよ、急に」

 サバパンを口にしながら日野は言う。

「いや、なんかさ。今日はいつも以上に暗いからよ。何かあったのかと思ったんだけどよ」

「…悪かったな。いつも暗くて」

「怒んなよ。だっていつも難しい顔してんじゃんお前」

 ヘラヘラしながら言う。

「お前は、いつも簡単な顔してるよな」

「うるせえ!どんな顔だよ、簡単な顔って」

 日野はハア、とため息をついた。

「まあ、何もないなら良いんだけどよ」

 それから、もう一度サバパンを口に運んでから「マズいな、これ」と笑った。

 昨日教えてやっただろうが。


 その日、変わったことがあったとすれば、そのくらいである。

 他にあるとすれば、昨日と同じく八坂と一緒に帰宅したことくらいだろうか。

 いや。もうひとつあった。これも日野絡みである。

 帰り際、八坂と一緒に教室を出る僕に、日野が言った。

「もう少し、馬鹿になっても良いんじゃねえの」

 その言葉の意味を、僕は考えなかった。



◇◇◇◇◇



 考える。昨夜布団の中で感じた違和感について。

 そして、思い当たる。

 あの時。リリンに救われ、廃墟で目を覚まして。言葉を交わしたあの時。

 僕は、何を考えた?

 質問するまでもなく確信していたはずだった。彼女の正体について。彼女が吸血鬼だという事実を。

「なのに、僕は」

 彼女のことを。素直じゃないなどと。優しさ故に僕を救ってくれたのだと。

 そんな風に思っていた。

 まるで、僕らしくない。

 吸血鬼などという化け物を。ほとんど無意識に信頼していたのだ。

 何故だ。なんで。分からない。考えろ。

 頭が、ズキリと痛んだ。

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