第六話 反転能力
とりあえず署に返ってきた俺達は、USB メモリを確認することにした。大希は、まだ様子が変わっていない。反転能力がなんなのかも気になるが、大希が落ち着いてから聞こうと思う。
一応パスワードもあったらしいが、優遊がハックして解いた。
「前職、ホワイトハッカーでしたので」
といっていたが、さらっと言わないでほしい。
「えーと、中身は?」
「機密情報大量にあるな」
「本部と別支部の位置と、個人プロフィールとそれぞれの功績、本部からの命令が超重要の部類に分けられるわね」
「本部は...えっ!?」
「どうした理菜。何かあったのか?」
「ここのとなりに、マンションがあるじゃない。そこの103号室の地下室から行けるんだって。103号室を使っているのは、本部の幹部末席だって」
「そんなに近くだということは、完全になめられていますね」
「凍睡兄弟が落ち着いてから、突入しようか」
で、その凍睡兄弟なんだが、まだ暁止は目覚めていない。大希が【治癒】すればいいのだが、反転能力ってのがある間は、普通の能力は使えなさそうだ。
聞いておこうか。
「大希、反転能力って何なんだ」
「ハァ。そんなこと察せよ。反転能力は、本来の能力にまつわる別の能力だ。系統では同じになるが、真逆の効果を与える能力になる。それは、能力の保有者が反転能力を使うようになった原因を取り除かないと消えない。うちの家は、そう伝えられてきて、反転能力をもとに戻す仕事をしているんだ」
「ということは、暁止も知っているのか」
「違う。断言しておく」
えっと、兄弟じゃないのか?
兄弟なら、知ってると思ったんだがな。若とかいろいろあるのかもな。あんまり深く聞かないでおこう。
俺達が話している間に、理菜が回復薬(気付け薬)を作ろうとしていた。
「これでなんとかなるでしょ!」
「まともな薬なんだろうな」
「大丈夫大丈夫!」
「不安だから凪で試せ」
「いいよ」
げっ、マズい。色んな意味でマズい。
「ちょっとまって、落ち着こう。ね」
「そんなこと言うってことは、私の料理を危険だと思ってるのね」
「ちがう。ちがうんだ。これには事情があって」
「へぇー。どんな事情?」
ここは、情に訴えかけよう。
「俺は気付け薬アレルギーなんだよ...」
「そんなアレルギーはない」
しまった。大希は、医療のプロなんだった。
「つまりはたくさん欲しいのね」
「違う!ほんとに誤解で!」
「一応たくさんあるから。安心してね。じたばたしても鶏は裸足って言うし」
なんだ、その、ことわざっぽいの。
聞いたこともないぞ。
本当にそんなのあるのか?
「なあ、“じたばたしても鶏は裸足”ってどういう意味のことわざなんだ?」
「真実はいつも1つっていう意味なんだって」
「そうなのか」
「使ってたら賢そうでいいじゃない」
その発言がすでに賢くなさそうなんだが...
まあ、俺が気付け薬の実験台にならなくてすみそうだ。
ありがとう、ことわざ。
ことわざは偉大。
「...あれ?ここ署?どうして帰ってきてるんだ?」
ことわざの話をしていたら、暁止が何事もなかったように起き上がった。
「暁止!?体はもう大丈夫なのか!?」
「大希。俺は大丈夫だが、その口調はどうしたんだ?」
「あー...いつもの僕が落ち着くためのお休み期間みたいな?」
「そうなのか。疲れてんだったら、ちゃんと言えよ。俺みたいに倒れて欲しくないからな」
「うん!分かった!!」
いつも通りの大希が少し戻ってきたみたいだな。
良かった、元気になって。
「大希はもとに戻ったのですか?」
「大体はね。でも、まだ完全じゃなさそう」
「そうなのですか。一度聞いたことで悪いのですが、反転能力について、もう一度聞かせてほしいです」
「いいよ。反転能力はある期間の間、自分の能力の代わりに使うことのできる能力なんだ。つよい感情を得ると、力が暴走して世界が壊れる可能性があるから、神様が“荒れていないと制御できない能力”をつくったって言われてるよ」
「分かりやすいな。ありがとう」
「そんなもんがあったのか」
「大希は家に伝わってきたことだって言ってたが、暁止は知らなかったのか?」
「家に伝わる?ああ、俺達は本当の兄弟じゃないんだよ」
「「「は!?」」」
驚愕の声が重なった。




