第7章 ここで始めるスローライフ?
だが、感情で決めるほど、俺は馬鹿じゃない。
「住めそう」と「住める」は違う。
生存者にとって、その差は致命的だ。
俺は村の中央付近に立ち、頭の中で条件を並べ始める。
専門知識なんてない。
あるのは、一般教養と、この一年の経験だけだ。
まず、水。
これは文句なしだ。
湧き水か流れがある以上、煮沸すれば最低限の確保はできる。
雨水も使える。
火に関しては正直匂いが出るため、あまり薪や木炭では使えない。
しかしこんな村ならば、都市ガスではなくプロパンなはず。
そこから、少しづつ使えば、1人の俺にはあまりある量だ。
次に、食料。
畑がある。
種は……探せばあるかもしれないし、さつまいもの蔓らしきものが見えるから、芋は収穫できるかもしれない。
ただ農業知識がゼロなため、作れるかは謎だ。
保存食も、村中を回れば多少は集まるだろうし、川があるため魚もいるだろう。
ただ魚の場合、奴らの死体がない上流でのみ取れた物に限るだろうが・・・
問題は、防御だ。
村は山に囲まれている。
この集落へとつながる道路は入り口、出口で一本に続いている。
他に獣道はあるが、奴らは自然領域に入らないし、意思を持ってそこを通り来るとは考えられない。
――侵入口は、限られている。
視界も悪くない。
少し手入れし、入り口、出口の部分に櫓を立てれば遠くから近づく影は見える。
音はどうか。
村の真ん中を流れる川の音が、常にしている。
増水はあれど、通常でもそこそこの水量で音も大きいだろうとわかる川。
これは利点でもあり、欠点でもある。
音を隠せるし、奴らの駆除に利用もできるが、逆に物音に気づきにくいのと逃げ道が塞がれる。
また匂いはどうか。
風向きは一定じゃないが、基本山から吹き下ろす風は川側におりている。
それは山の麓の部分で生活を行えば、最悪奴らが匂いに気づいても川を渡れないと言うことだ。
そして生活域を風下に置けば、多少匂いの分散が抑えられるだろう。
肉を焼いたりは中々難しいだろうが、それはどこか村の外に別で作るしかない。
俺は指を舐め、風を見る。
今日の風向き。
朝と夜でどう変わるかを調べなければ。
ただ……工夫すれば、なんとかなる。
そして、最大の問題。
――俺一人で、守れるか?
拠点を作るということは、「守るものが増える」ということだ。
物資。
畑。
水場。
拠点は逃げられない。
今までの俺は、動いて生き延びてきた。
危なくなったら捨てる。
それが正解だった。
だが――
俺は、もう一度畑を見る。
水場を見る。
空っぽの家々を見る。
ここなら、動かなくても生きられるかもしれない。
完璧じゃない。
最強でもない。
でも――生存確率は、確実に高い。
俺は、ゆっくりと息を吐いた。
……よし。
ここを、拠点にする。
砦なんて大層なものじゃない。
知識もない。
資材も限られている。
それでもいい。
完璧じゃなくていい。
守り切れなくてもいい。
――今までより、死ににくい場所
それを作る。
俺は相棒のバットを肩に担ぎ、村を見渡した。
ここが、俺の新しい居場所だ。
少なくとも――しばらくの間は。




