第4章 第一村人、発見
獣道を進み、木々の隙間から集落が見える位置まで来た。
ここから先は、一歩一歩が命取りになる。
俺は地面に膝をつき、ゆっくりとバックパックを下ろす。
音を立てない。
ファスナーは一気に開けない。
少しずつ、少しずつ。
望遠鏡を取り出し、深呼吸を一つ。
――さて、第一村人はいるかな。
レンズ越しに見える家屋は、全部で十数軒。
どれも古い木造で、屋根は一部崩れ、窓ガラスは割れているところも多い。
人が住んでいる気配はない。
洗濯物も、煙も、動きもない。
……だが、それで安心するほど、俺はもう若くない。
視線をゆっくり動かす。
家の影。
畑の端。
物置の裏。
――いた。
一体。
畑の真ん中で、棒立ちになっている。
いや、立っているというより、置かれていると言った方が近い。
力が抜けた姿勢。
首は不自然な角度で傾き、腕はだらりと下がっている。
……うん、奴らだ。
人間だった頃の服を着ているが、それだけだ。
中身は、もう人じゃない。
問題は数だ。
奴らは群れる。
一体いれば、周囲に数体はいると思え。
視界に入らない場所、家の中、物陰。
どこから飛び出してくるか分からない。
俺は望遠鏡を持つ手を止めない。
焦らない。
時間はいくらでも使っていい、急ぐと死ぬ。
五分。
十分。
十五分。
……追加で3体。
家の中から出てきた奴。
物置の影に座り込んでいた奴。
倒れているのかと思ったら、音に反応して首だけ動いた奴。
合計、4体。
そんなに多くはなく、撤退するほどじゃない。
ただまだ家の中にいる可能性はるので、増える可能性はある。
俺は地図を頭の中で重ねる。
村の中央――川。
水量は昨日の雨で増えているはず。
流れも速い。
……使えるな。
もしここで物資を漁るとして、見つかればアウトだ。
4体に追われて逃げ切れるほど、俺は足が速くない。
なら、先に数を減らす。
――やるしかない。
正直、嫌だ。
だが、生きるためには物資が必要だ。
それは変わらない。
時間は午後一時。
季節は冬だがもうすぐ春だ。
日はまだ高い。
……うん、まだ大丈夫だ。
俺は立ち上がり、足元の小石を一つ拾った。




