表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶喪失の九尾狐の少女は、冒険者を目指します ~失われた記憶の先で~  作者: いぬぬっこ
第一章 異世界アニマルーンの目覚め

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/8

第四話 アンエクスペクテッド・イベント!

「このまま、ギルドのご利用方法についても説明いたしましょうか?」


――やめてくれ。

もう、私の頭の中はいっぱいいっぱいだから。


「ありがとう。

だが、次の利用者も待っているだろ。リリーの手をこれ以上煩わせるのは申し訳ない。

アミには後で、オラから説明する。ありがとな、リリー」


カクトさん、ナイス判断です!


「かしこまりました。

お気を遣わせてしまい、申し訳ありません。

カクトさん、アミちゃん、またのご利用をお待ちしています」


リリーさんは、私たちの後ろの列を見て、すまなそうに頭を下げた。

そんなに気にすることないのに。


私たちは、また長椅子のところまで戻った。

振り返ると、リリーさんの前には、依頼書を持ったアニマたちが列をなして並んでいる。

ほんの少しのタッチの差だった。


「アミ、どうする?

今から、ギルドについての説明をしようか?」


「……手短にお願いします」


私の顔を見て、カクトさんが愉快そうに笑う。


「わかった、わかった。

ザックリと、手短にな」


カクトさんは、少し考えるようにしてから話し始めた。


「ギルドは……そうだな、みんなの活動の場なんだ。

冒険者にとっては、主にクエストを受注したり、解決した報酬を貰う場だな。

商人や一般のアニマは、ギルド内の設備を使う目的で来ることが多い」


「ほかにも、クエストの依頼書を出したり、だな。

ちなみにこのギルドには、食堂や酒場、図書室といった設備があるぞ。

これらは、ギルドカードを持っていれば誰でも利用できる」


「ここまでは、いいか?」


こくりと頷く。


「じゃあ次は、ギルドカードについてだ。

これもザックリ説明するぞ」


「カードは無料で作れる。

だが、失くしたりして再発行になると――銀貨三枚、必要だ」


結構な額だ。


「だからカードは、大切に管理するようにな。

それから、カードには利用期限がある。

作成日から、冒険者用と商業用は五年。

それ以外は一年ごとに一回、更新が必要だ」


「……あ、更新料は無料だぞ」


カクトさんは、そこで一度息を継いだ。


「ギルドカードがないと、入れなかったり、金を取られる施設や村、町は多い。

それというのも――」


「カードには、犯罪歴も登録されているからだ」


悪いことをした場合、その記録が残る。

ひどいと、カードの永久剥奪なんて処分も下るらしい。


「それを調べる道具が、どの町の入り口にも、ギルドにもある。

悪さをしようなんて考える奴が、減るようにな」


「ちなみに、職歴も登録されるぞ」


なるほど……悪いことはできない、と。

いや、絶対しないけどね!


万能なカードってわけだ。


……うん?


「ギルドカードを、偽造されたらどうするの?」


疑問が、口からついて出た。


「難しい言葉をよく知っているな。

だが、それは大丈夫だ。カードの裏を見てみろ」


言われた通り、ギルドカードを取り出して裏を見る。


すると、そこには変な文字や紋様がびっしりと書かれていた。

素材も、人間だった頃の知識にはないものだ。

表の顔写真も、立体フルカラー。


もしかしたら、アニマルーンは、

私が知る人間の文明みたいに、高度な文明が築かれているのかもしれない。


それでも、このトルトゥール村は、世界のほんの一部分。

世界の中枢は、どうなっているんだろう。


疑問は、さらに増えるばかりだ。


「裏に書いてあるものは、ギルドカードの識別番号だ。

特殊な構造だから、偽造できる者はそうそういない。

素材も希少で、特別な加工がされている」


「だから、偽造カードなんてまず作れない」


へぇー。

そんなにすごいのね、このカード。


「さて、説明は以上だ。

最後まで、しっかり聞けて偉いぞ!」


「そんな、偉いアミには――ギルドの中を案内しよう」


おおっ!

待ってました!!


ここまで、長かった……。


カクトさんに連れられて、ギルドの中を見てまわる。


ギルド内は三つのエリアに分かれていて、中央エリアには、ギルドボードや受付カウンター、食堂がある。

左のエリアには、議事堂や応接室がある。

そして、右のエリア一体は図書室となっている。

ちなみに、中央エリアの地下は酒場となっているらしい。

一通り案内がすむと、カクトさんは図書室の幼児コーナーで、私に絵本を読んでくれた。


ハーピーの郵便屋さんが、みんなに幸せを届けるお話。

ユニコーンが森の中を探検して、綺麗なお花畑を見つけるお話。

フェニックスが、暴走したサラマンダーの群れを鎮めるお話。


どれも、素敵で面白いお話だった。

なんせ、カクトさんが感情をたっぷりこめて話すので、聞いてきて飽きるということがない。

トイレ休憩を挟み、更に絵本を読んでもらおうとした時ーー


「カクトさん!!」


必死な形相のゴブリンが駆け寄ってきた。


「どうした、ハサウェイ?」


カクトさんの纏う空気が変わる。


「報告します。森の主と思われるマニアが、村に接近中。

東の街道で、バーバリーが応戦しております。

至急、援助が必要です」


ゴブリンーーハサウェイさんも戦っていたのだろうか。

よく見れば、彼は身体のあちらこちらに傷を負っていた。


「わかった。

すぐに、現場に向かう。

ハサウェイ。お前はハーマンを呼んで、彼と一緒に村の警護にあたれ。

……アミ。

そういうわけだから、しばらくここで、大人しく待っていてくれ」


私が頷くの確認するなり、カクトさんはハサウェイさんと共に行ってしまった。


森の主のマニア。

どんなマニアかは、わからない。

が、聞くからに、とても危険で強そうだ。

カクトさんは、強い。

なんせ、この村の自警団団長だし。

……でも、心配だな。


「あー!!

やっぱり、いた!!!」


突然、子どもの高い声が響く。

声がした方を振り向けば、

そこにはくるりんとした目が可愛らしいーー白いドラゴンの男の子がいた。

……びっくりした~。

この子は一体、何なのだろう?


「じいちゃんから聞いた通りだ。

君、カクトさんが連れてきた子でしょう??」


カクトさんを知っている?

いや、この村の自警団団長なんだから当たり前か。

みんなに慕われているようだし。


「ねえ!! ねえ!!

君、なんて名前??

僕はジェイド!!

じいちゃんと一緒に暮らしているんだ~。

あ! もうこの村の中は見た??

良かったら、僕が案内して上げる!

さあ、こっちだよ!!」


ジェイドは、私をギルドの出口の方へと押していく。

何……この展開!?

強制イベントみたいだな!?


「ねえ! ねえ!

君、歳は幾つ?

僕と同じくらいかな?

僕、ギルドにはよく遊びに来るんだ!」


……うん、この子ーージェイドはよく喋る子だな。


「あっ!

うるさい?

今、うるさいって思った??

そんなこと、言わないでヨー。

妖狐もヨー」


……うーん。

今のは、ひょっとしてギャグ??


「あっ! わかった?

今のギャグ、わかった?

いいギャグでしょ!」


そんなこんなで、気づけば広場まで来てしまった。

……カクトさんに怒られること確定。


「あのねー、あそこがーーあっ!

ティルのお父さんだ!」


ジェイドがノームに駆け寄っていく。

……あれ? あの、ノーム……険しい顔をしている……。

慌てて、ジェイドの後を追いかける。


「おっ!

ジェイド君か。

今は仕事中だよ。

また、後でな」


ノームはすぐに踵を返して、東の方へ行ってしまった。


「今、ティルのお父さんが言った方向ね。

あそこを行くと、村の東の入り口があるんだ。

東の街道で何かあったのかな?」


……カクトさん、大丈夫かな。

また、不安になってきた。


「あれ? どうしたの?」


ジェイドが心配そうに、私の顔を覗きこんでくる。


「ううん。

何でもないよ」


ジェイドまで不安にさせて、どうする私。


「そう? なら、いいけど……。

こっちにあるのは……」


「コラ! ジェイド!

こんなとこで何をしている!?」


いつの間にか、アリババじいさんが私たちの近くまで来ていた。


「……じいちゃん」


ってことは、ジェイドはアリババじいさんのお孫さん。

……に、似てない。


「家の手伝いもせず、こんなところでフラフラしおって……。

それはそうと、ジェイド。

お前、わしがジャムを作るために大切にとっておいた、ウォルの実をつまみ食いしたじゃろ?」


「してないよ!」


「いいや、した!」


「だから、してないって!」


「…………本当は?」



「したよ! めちゃくちゃ美味しかった!」


したんじゃないか!!!

と、心の中で全力でツッコンだ私は悪くない。


「わっ! わっ!

アミ! 一緒に逃げるよ!!」


ジェイドは、ぐいぐいと私を押して、逃げだす。

えっ!?

私も!?

私は無関係でしょ!!?


「あー! コラっ!!

またんか!! ジェイド!!」


アリババじいさんが般若の形相で追ってきた。


こっ、怖い!!

アリババじいさん、怒ると、ものすっごく怖い!!


無関係なはずなのに、つられて私もジェイドと一緒に逃げる。


「アミ!! こっち!!」


ジェイドは村の出口の方へ駆けていく。

ええー……いいのか?

村の外に出ていいのか??


…………でも。

何か楽しいかも…………ほんのちょっぴりだけど。


私はジェイドと一緒にトルトゥール村の外へ出た。

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ