断罪イベント365 ― 第5回「王妃の指輪がない!」
断罪イベントで365編の短編が書けるか、実験中。
婚約破棄・ざまぁの王道テンプレから始まり、
断罪の先にどこまで広げられるか挑戦しています。
豪奢な大広間。
壇上の王子は勢いよく立ち上がり、声を張り上げた。
「本日この場をもって、彼女を断罪する!」
観衆がざわつく。今回は証拠があるらしい。
王子の隣には、したり顔の黒幕令嬢が寄り添っていた。
「殿下。王妃さまの大切な指輪が、
婚約者の部屋から消えておりましたの」
どよめきが広がる。王子は胸を張って叫んだ。
「母上の宝指輪が盗まれた! これこそ不貞と不忠の証!」
婚約者は蒼ざめて首を振る。観衆の視線が一気に彼女へ。
「まあ! 本当に盗んだのかしら」
「王妃さまの品に手を出すなんて……」
黒幕令嬢は勝ち誇った笑みを浮かべた。
だがその瞬間――ふわりと王妃が立ち上がった。
凛とした声が大広間に響く。
「その指輪なら、修理に出しているところですわ」
沈黙。観衆の目が点になる。
王子は「えっ……修理……?」と口ごもり、
黒幕令嬢は顔をひきつらせた。
王妃は続けた。
「それに、この子がそんな真似をするはずありません。
小さな頃から宝石よりも針と糸を大事にしてきた、誠実な子なのです」
観衆がどよめく。王妃が庇うその言葉は、何よりも重かった。
婚約者は唇を震わせ、深く頭を垂れる。
「……ありがとうございます、王妃さま」
その姿に、観衆の空気は一変した。
「王妃さまのお墨付き!」
「やはり潔白だったのか」
王妃はゆっくりと黒幕令嬢に視線を移した。
「それより、あなた。人の部屋で何をしていたのかしら?」
黒幕令嬢の顔がみるみる青ざめる。
観衆の囁きは冷笑へと変わった。
「不法侵入?」
「泥棒はお前じゃないか」
「殿下、母上より怪しい女を信じるとは……節穴だな」
王子はしどろもどろに口を開いたが、もう遅い。
今回の断罪は、母上のひとことで幕を下ろしたのだった。
ーこそこそ嗅ぎまわるから。
ダメダメ。
総評:王妃のひとことは、断罪イベント最強のトドメ。
読んで頂き、ありがとうございますm(_ _)m