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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

巻き込まれ召喚だと判定され追放された元サラリーマンの俺が、王になった話

作者: 山田 勝

「斉藤!追放する!」

「サイトー!追放だ」


「はい、分かりました」


 俺、斉藤堂参さいとうどうさん、親父に戦国武将と同じ読みをつけられた28歳サラリーマン、追放されたぜ。


 この国に、召喚された。巻き込まれ召喚と判定されたぜ。


 何故なら、授かった異界渡りのスキルは、複写コピーと、収納と翻訳、収納と翻訳は、転移者には、必ずついているそうだから、

 実質、コピーしかないのだ。


 試したら、書類をコピーできた。

 サラリーマンだからか?


 一方、本命の武藤君は、現代武器召喚、現時点で、銃と車を召喚出来ている。


 それでパーティーが結成された。聖女と、魔道士、剣聖、どれも、女性だ。俺を雑用係で、魔族領に出立し、経験値を稼ぎ、やがて、魔王討伐だとなったが、



 俺は、断った。

 だって、怖いんだもの。

 武藤君だって、高校生だ。実際に戦ったことないだろう?


 嫌だろ。断れ。


『いや、サバゲーでやっていたよ!』

『それは、違うだろ。断ろうよ』


 と散々、文句を言っていたら、追放クビとなったワケだ。



『臆病者はいらない。去れ!』


 そうだ。俺は、臆病者だ。


 普通、追放ものの、主人公は、自我を追放後に、発揮するが、

 私は、逆で、追放前に、自我を発揮したのだ。

 それが、追放の理由だ。



 その後、冒険者ギルドで、冒険者の事務の仕事を請け負うことになった。


 冒険者ではない。その下働きだ。


 俺は、普通の日本人だ。この世界の人は、信じられないくらい歩く。

 体力が段違いだ。とても、冒険者パーティーについて、荷物持ちの仕事など出来ない。


 文字が読めるのと、サラリーマン時代の事務経験で、何とか糊口を凌いでいる状態だ。


「アハハハハ、臆病者がいるよ」

「ムトウ殿は、今日、出立された。皆、盛大にお見送りをしたぞ」

「同じ異世界人でも大違いだ」



 高位冒険者や、貴族で実習で来ている奴らは、俺を馬鹿にする。


 しかし、

 田舎から、口減らしが理由で来た12~18歳くらいの青年達は、俺が事務が出来るから、丁寧に接してくれる。

 文字を教え。こちらは、魔物の解体などを教えてもらう。良好な関係を築いた。


 また、中継地点を指定して、獲物の運搬を請け負うこともするようになった。


 事務で、コピーを使い。段々、レベルも上がっていった矢先。


 この世界に来て、1年ぐらい経過した時に、騒動が起きた。


 残念ながら、武藤君の敗北だ。



 ・・・・・



 城から、使者が来た。


「あのサイトー殿、城に来て下さい」

「貴方は、ムトウ殿の敗北を予見しました」


「予見というよりも、危ないと言ったよ」


「陛下がお呼びです」

「断る。追放刑を受けたのだもの。逆に、行ったら、死罪じゃない?」

「恩赦を出します」

「ええ、なら、助言しますから、日本に帰してよ。召喚って、誘拐だよね」


「「・・・・・・」」


 黙っちゃったよ。



 しばらくして、今度は、神官が来た。


 スキル鑑定だ。


 ピコン!


 複写レベル5・・・・称号、モノをコピーするもの。


「何だ。まだ、複写か。それ以外にはないな」


 と神官さんたちは、残念そうに帰った。




 そんな矢先、


 俺が仕事を請け負っている冒険者たちが、やってきた。

 皆、女の子だ。各パーティーの華が選抜されて来たのだ。

 これは、何かあるな。



「サイトー殿、異世界人の弱点を教えて下さい!」

「ムトウが、賞金クビに堕ちたよ」

「賞金、金貨1000枚だからねっ」


「ええ、それ、俺に聞いちゃう?」



 話を聞くと、聖女、魔道士、剣聖と、猫獣人族の女の子ポーターは全滅、ムトウだけ車で逃げて、生き延びた。

 彼は、そのまま城に帰らずに、野良勇者になり。盗賊達の用心棒になっていると?


「何で、敗北したのか。詳細は分かるかい?」


「わかりません。何せ。生き残りは、ムトウだけなので・・・」


 やっぱりな。だが、大体、予想が出来る。


 奴は、車で、魔族領に行ったのだ。車は目立つ。

 最初は、敵は、混乱の極地に陥ったが、


 やがて、対策され。



 狙い撃ちにされたのだ。


 勇者パーティーは、敵地は徒歩のイメージがあるが、潜入をしなければならないのだろうな。知らんけど



 女の子達が、犠牲になって、ムトウを逃がして、それで、気を病んで、城に帰れなくなった。

 魔王軍は、対銃のドクトリンを開発したか。


 銃を、何回も使えば、この世界の魔法で対策出来る。俺ですら、思い付いたのだからな。




「異世界人の弱点な。教えてもいいが、条件がある」


「体?好きな子を選んでいいよ」


 金がないから、時々、こういうことがあると聞いた事がある。しかし、仕事と艶を交ぜてはいけない。


「違うよ。金は後払いでいいよ。賞金の3パーセント欲しい。どうせ。合同で討伐するのだろう?」


「「「はい」」」


 そして、私は、語り出した。

「長いよ。臨機応変に動くためには、原因をしっかり考察した方がいい」


「分かったですわ!」

「リリーがそういうのなら」


 おお、さすが、似非令嬢の、魔道士リリー、魔道士は学問が好きだから、分かっているのか。




 実は、一般の日本人は、軍事常識がない。

 武藤は、ミリタリー好きで、一般人とは言いがたいが・・・


 俺は、ミリタリー好きと話した事がある。

 衝撃だった。



 ・・・


 日本には、自衛隊という騎士団がある。自国で優れた兵器を作れるが、欠点もある。実戦で、実証試験を行えないことだ。平和だからな。


 唯一、実証試験を行えるものが、地雷探知機だと言われている。海外のボランティアに無償提供して、俺は、性能を調べる仕事についていた。


 その国では、元自衛官、地元や外国の元軍人のボランティア、様々な人がいたな。


 そしてな。日本に帰って、友人の誘いで、ミリオタの集会に出席したことがあった。


 ガヤガヤガヤ~


「もし、日本が侵略されたら!」


 ・・・・・・


 正直、舌を巻いたよ。知識が半端ない。部隊や、武器の性能、しかし、俺が口を挟めることが、一つだけあった。



「今は、銃後と戦場の区別が付かないから、自衛隊のトラックを防弾処置することが優先かな。兵站を担うのは、トラックになるのだろうからね」


 説明すると、法律の関係か。自衛隊のトラックやパジェロ、ジープには、防弾処置がされていない。海外に行くときに、後方支援連隊で、防弾処置をして、帰ったら、外すのだ。一部、トラックはそのままだとは聞く。


 例えば、C国は、ロクに軍備のない国を侵攻した際、民兵にトラックを狙い撃ちされ、大損害を被った。以来、C国は装甲車に力を入れ、アフリカにも輸出している。


 また、イスラム原理主義ゲリラがウロウロいる国では、駐屯軍は、移動は、基本、装甲車だ。

 そんな話はごまんと聞いた。


 シーーーン


「「「「・・・・・・」」」


「いや、流鏑馬戦車で、護衛するでごわす」

「それは、重要ではないよ」


 途端に、幼稚になった。

 こいつら、機甲化部隊と自動車化部隊の区別がついていない。

 まるで、兵隊の人形で遊ぶ子供だ。



 およそ。100キロ先から、進軍し、そのまま戦場に突入するのが、機甲化部隊、歩兵は、装甲車で守られる。


 戦場の数十キロ前から、トラックから降りて、行軍して、戦場に向かうのが、自動車化部隊、

 この区別は厳密ではないが、基本はこうだ。どこの国の陸軍も、行軍は基本だ。


 自動車を降りるのは、


「自動車は燃えるからだ」



「今は、装甲車も自動車も等しく、ドローンで撃破されるから、重要ではない」

「そうそう、コスパの問題だよ」


 ガヤガヤガヤ~~


 こいつら、自分が、兵士として参加する。戦争に巻き込まれるかもしれないと云う視点がない。ゲームのプレイヤーか。まるで、旧日本軍の無謀な突撃を命じる指揮官みたいだ。


 そうか、俺は、一兵士の視点にいつのまにかに、なっていたんだ。

 外国で、元軍人と交流をしていたから、いろんな苦労話を聞いた。



 ・・・・・




「で、知識の無さの不意を突くことは分かったわ。具体的に、ムトウは、どうやったら、倒せるの?」


「どうせ、100人くらいでやるのだろう」



 戦略を教えた。


「まず。銃と戦うと思うな。車両が敵だ」




 ☆草原


 車で通れる所は限られている。


「やっぱり、パジェロと、三トン半トラックか、幌をつけたままだ。馬鹿だな」


 行軍には、大まかに二種類ある。通常の、行軍と、敵の脅威がある地域で行う接敵行軍だ。


 車両だったら、荷台に、銃座を備えて、警戒しながら、行軍するものだが、


「やれ!」


 シュン!


 斥候職が草むらから出て、馬糞の入った袋をフロントガラスに投げつけた。訓練通りだ。


 キキーーーー


 急ブレーキで止り。ワイパーが動いたが、

 ワイパーで掃除しようにも、広がるだけだ。




 そこを、魔道士や魔法剣士がファイヤーボールを放つ!あらかじめ教えたガソリンタンクがある場所だ。



「「「「ファイヤーボール!」」」


 ガソリン車だから、燃えるか?


 ボアアアアアーーーーーー


 燃えた。ファイヤーボールは、焼夷弾のようだ。


 パジェロと、三トン半トラックから、火だるまになった盗賊達が出てくるが、


「銃を持っているかもしれないから、待避だ!」


「「「はい!」」」


 こいつら、十代、皆、素直で助かる。知らない事に対する畏敬がある。

 武藤君にはなかったな。

 いや、俺も人の事は言えない。この世界には未知の魔法がある。気をつけよう。



 ・・・・



「こいつが、ムトウだよ!」


「武藤君・・・」

「ヒー、ヒー」


 もう、息しかしていない。


「銃をもらうね。仇はとってやる。コピー!」


 ピコン!


 俺の能力はコピー、初めは、日本のコピー機のように、文字を写すだけであったが、レベルがあがり。モノもコピーできるようになった。



「武藤君、可哀想だけど、これ、戦争なのよね。楽にしてあげるよ」


 バン!


 魔王軍に敗れても、屈辱に耐え。城に戻り。戦訓としたら、成長したのにな。


 軍隊って、すぐに、常識が変わる。敗北したら、原因を究明して、新たな戦い方が出来るだけなのに、





 ・・・・・




「え、支払われない?」

「ヒドイ!」


 冒険者ギルドに討伐部位を渡したが、支払いは拒否された。


「まだ、王城から入金されないのですよ。これ、本当にムトウか?証拠を示せと云ってきています」


「だから!討伐部位を提出したよな!鑑定出来るよね!」



「まあ、皆、怒るな。気持ちは分かるが、この王国は、それどころでなくなる」



 やがて、武藤君の討伐された日を境に、魔王軍の侵攻が激しくなった。


 国防を、召喚した日本人に頼ろうとした国だ。

 騎士団もそれほど、強くない。

 敗退の報が続く。


 金のある奴は、逃げ去った。

 低位冒険者の諸君らは、金無しだ。


「どうしよー」

「犯される?」

「戦うか?」



「皆!銃があるよ!訓練するからな!」


「・・・銃?」

「でも、魔王軍に対策されまくったと聞いたよ」


「多分だが、魔王軍は死霊を使ったのだ。死霊を盾にして、銃弾を防ぎ。飽和攻撃をした。だから・・・」




 ・・・・・




 魔王軍がこの街にもやってきた。


 威嚇で、撃つ。


 バン!


「「「!!!」」」


 途端に、距離を取る。300メートルくらいだ。

 この距離は、射手からは、動いていれば当たる気はしないが、狙われた方は逃げられる気がしない絶妙な間合いだ。


 やがて、死霊使いっぽい。ローブを羽織った奴が、死霊たちを引き連れて来た。

 この国の騎士団一個中隊というところか?人の嫌がる事を知ってやがる。



「爆裂魔法師!準備はいい?」

「はい、でも、本当に、こんなのを爆発させれば、効くの?」


「多分な」


 俺は、唯一、爆裂魔法を使える女の子に、ある物を爆発させるように命じた。

 それは、鍛冶職人に作らせた。鉄の四方形の塊に、ラッパ状の穴が空いている物、


 この世界の爆裂魔法は、物自体を爆発させる。物が火薬になるのだと仮定した。

 威力が炸薬とそう変わりないのだ。



 なら、火薬は、曲面の方向に向かう。モンロー効果を利用する。

 つまり、ラッパの先に爆発が向かい。破片が飛び散る計画だ。


 鉄の箱の後ろに、土嚢を積み。後方爆風を避ける。


 死霊を吹き飛ばし、そのスキに、100人で、つるべ撃ちで、死霊使いを殺す。

 これしかない。



 しかし、


「白旗?の使者」



「ねえ、これって、何かあるよね」


 女だ。ダークエルフだ。服も、体のラインを見せつけるようなセクシーさだ。目のやり場に困る。



「正直、ここを陥落させても、戦略的価値はない。ここで、戦死者を出すくらいなら、戦わない。どうする?」


「はい、戦わないです・・・ですが、魔王軍にも加わりません」


「それで、十分よ。水と食料は置いていくわ。だから、背後から・・・襲わないでね」


「勿論です」



 中立の立場をゲットした。




 ・・・・・・・



「魔王陛下のお呼びである!」


 王国は陥落し、俺は、城に呼ばれた。



 魔王は、あのダークエルフだ。



「フフフ、サイトーよ。配下になれ、何を望む。余の体でも良いぞ」


「お戯れを・・・なら、王と神官達の処刑を」


「「「「ヒィ」」」」


「何故じゃ。意趣返しか?」


「いいえ。こいつらは、召喚という誘拐を行った外道です。もう、二度と召喚出来ないように、魔方陣を破壊し、異世界召喚魔法を使える者を、消すべきかと」


「フフフ、魔王軍は寛大である・・と示すつもりだったが、まあ、良い。その代わり、この国の王になり。妾を支えよ」


 こりゃ、頷くしかない。


「少なくても、私を慕っていくれる冒険者の子たちの安全を保障していただけるのなら・・」

「当たり前だがな」


 こうして、この国では、召喚を行うことはなくなった。

 銃を使う100人ほどの軍団が、この世界で、魔王軍人族部隊として、大きな戦果をあげるのは、すぐ後の話だ。









最後までお読み頂き有難うございました。

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