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第4.5話 ずっと扉の前で



 時間は遡り。ミラがジュリエラの話をする空き教室へと向かうのに付いて来た者がいる。


「エリオ、告白か!?お前流石に、それは早すぎと言うか。もう少し時間をかけてだな~!」


「そんなんじゃないよ、グリム。ていうか、付いてこなくていいよ」


 彼、グリムはお昼をジュリエラと過ごすと言ったエリオを心配し付いてきていたのだ。心配半分、好奇心半分といったところか。とにかく、彼に話を聞かれてはまずいので、ミラは彼を置いて空き教室に入っていった。残されたグリムが聞き耳を立てるも、ジュリエラの対傍聴魔法による耳鳴りで音が聞こえるはずなく、扉の前で待つことになった。


ー・ー・ー


「......入っちまうか?いやいや、それは人として最悪だ!」


 扉の前を腕組みながらぐるぐる回る。完全に不審者だが、幸いにも人通りがなく見る人はいなかった。しばらくして、扉が開く。


「!!エリ......あっ」


 出て来たのはエリオとジュリエラでなく、ジュリエラの専属メイド達だった。グリムの不審な動きと、声に反応をするも直ぐに平常時の顔になる。


「ジュリエラのメイドたち、良かったら中の様子がどんな感じか教えてくれないか?」


 彼の問いにメイド達は皆顔を見合わせる。


「え~と……申し訳ございません。ジュリエラさまの命で何も話すなと」


「グリム・レギンさま相手とはいえ、ジュリエラ様が最優先ですので」

 

「申し訳ありませんが、ご主人様から誰も入れる、何も話すなとしか」


 丁寧にお辞儀をして去っていった。メイド達が見えなくなるまで立ち尽くし、再び腕組みし直し閉じられた空き教室に目線をやった。


ー・ー・ー


 パン。と部屋の中から僅かにはじける音がして、反応を示した。正確には音よりも、魔法を打ち消した時に生じる微弱な振動を感じ取り、そちらに反応した。


(魔法を打ち消すって、あいつらまさか!......いや待て。待て。告白失敗したからって魔法で攻撃するなんて、どこの短気だよ!多分これは、部屋にかけてた防音魔法が消えたに違いない!そうだ!)

「よしそれなら!」


 そうして、もう一度、扉に聞き耳をたてるも。キーン!


「むぎゃ!!」


 ジュリエラの仕掛けた対傍聴魔法は打ち消されておらず、またもや耳鳴りに苦しめられた。結局、グリムはミラとジュリエラが出てくるまでお昼休みを全て使い切ることになった。


ーーーーーー

「心配で待っててやったんだぞ。気難しいお嬢様相手だからよ!」


「誰が気難しいですか!私はエリオさんと1対1で意見交換がしたくて、呼んだのよ。勝手に付いてこないでくださいな」


「まぁまぁ、2人とも」


 あの後、部屋から2人が出てきた瞬間、扉付近にいたせいで扉に顔をぶつけたグリム。謝るミラだったが、ジュリエラが「扉前にいた方が悪いですわ。エリオさんは悪くありませんわ」と腕を盾にして彼女の謝罪を遮ったことで、今こうなっている。


(それにしても......)

「やるな。エリオ、ジュリエラの奴、大分柔らかくなってるじゃなねーか」


 不意に後ろを歩く彼女にひそひそとジュリエラに聞こえない様に、今回の出来を話す。実際、ジュリエラはまるで別人のように対応が変わっているため驚いていた。なによりも。


「グリムさま。エリオさんと馴れ馴れしいですわよ~?手をどけろください。」


 ジュリエラがストレートに感情を出すなんてグリムは今まで見たことが無かった。いつも強気な彼女は他を寄せ付けづ、決して他人に隙を見せない。故に、グリムは今までの彼女と言う存在を更新した。その一方で本当に何があったんだよと、混乱する気持ちもやはりあった。







 ”ぐうぅぅぅぅぅうううううぅ”昼休みは終わり、午後の講義が始まる。講義の最中に鳴り続ける腹の音、11人しかいないクラスでは、それだけでもかなり目立つ。皆がその音の主に目をやる。その音の張本人、グリム・レギンはその突き刺さる視線に顔を紅くし、睨み返して散らすしかできなかった。隠す気もなく笑顔を見せる者、無反応を決める者がいる中、理由をしるミラは彼の隣で申し訳なそうにした。


「えーっとレギン様、成長期に食事を抜くのは良くないですよ?」


「そう言うのじゃ、ないです!」


 結局、その後のやり取りで耐え切れずヴェロニカ、アヴァンはグリムを指さして吹き出した。吹き出したヴェロニカをなだめながら、ハンカチを差し出すロランとでこの日の授業は、ハチャメチャなものとなって終わった。スキルや勇者候補の解説だったので彼らには問題ないが、唯一ミラだけが後で、ジュリエラから話を聞こうと決めた。


 

~講義終わり~


「グリム様。ダイエットですか~??」 「絶食ダイエットだ。お前もやった方が良いぞー。ニカ」


「ヴェロニカ様。朝食にあれだけ食べる者がダイエットのはずございませんよ」 「棘があるぞ、ユーリ」


「家が潰れたんじゃない~」 「てめぇん家を潰すぞ」


「アヴァン。冗談でも言っていい事と悪いことがあるぞ」 「よく言った、ロラン」


「僕が開発した飴舐めすか......。人が食べたら魔力の暴走が起きますけど......」 「気持ちだけ受け取っとくよ。ソラ」


「......」 


「何か言えよ!?」 「せめて何か言いなよ、ダリ」


 皆が一斉にグリムへと集まる。三者三様ならぬ、七者七様。誰かが揶揄いそれをたしなめる、もしくはノリに乗っかてみせるといった様に反応を送る。尚もグリム本人は机に突っ伏したまま、声だけを送る。


「あのジュリエラさま?」


「ダメよエリオさん。あれは貴方が来るのを待ってるだけよ」

「......」ふん!ふん!


 一方、ジュリエラと、何故かアヤメによってエリオはグリムの方に行けない様にされていた。






 ......これ美味しかったから取っておいた焼き菓子だけど、グリムさま。食べますか?


 流石、俺の大親友だな!


 ふふん。よかった。


 ......

 

 

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