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24 アリサの反省

 テッドがパレシャにブランケットを巻いた令嬢に質問する。

 

「それよりユノラド男爵令嬢が君の顔を見て驚いていたが顔見知り以上の関係なのか?」

 

「アリサ様とご一緒の時以外に接点はございませんわ」


 不思議そうな顔で首を振るご令嬢の様子にテッドは腕組みをして顎に手を当て思案していた。


「そうか……。だがあの態度は……」


「アリサ嬢。生徒会室へ行く途中でしょう。僕もご一緒させてください」


 ケネシスがアリサに笑顔を向けた。三年Aクラスの生徒会役員はアリサとケネシスでアリサは生徒会長でBクラスに副会長がいる。ケネシスが生徒会室へ付き添うことは自然な流れである。 


「お荷物を持っていただいたままでしたわ。ごめんなさい」


 アリサが手を出すがケネシスはゆっくりと左右に首を振った。


「いえ。最初から僕も同行すべきでした。あのような危険を予測しなかった自分が情けないです。第一級危険分子が排除されたとはいえ何があるかはわかりません。第二級危険分子が追いかけてくるかもしれませんからご同行いたします」


「っ!!」

「「え?」」


 女性たちが詰まる。


「「「「「「ぶはっ!!」」」」」」

「「「「「ぷふふふ」」」」」


 テッドの友人たちも含めた男性たちは笑い出した。


「わっはっはっ!! 確かにズバニールさんが今の件を聞いて苦情を言いにくるかもしれないな。ケネシスは冗談も言えるのだな。新しい発見だ」


「テッド? 冗談ではありませんが?」


 真面目な顔のケネシスに笑っていた男性たちが顔を引きつらせた。


「ふふふ。本当にあれは危険分子ですわね。ではご一緒していただけますか?」


 兄であり公爵子息である男を「あれ」扱いしたアリサが楽しそうに笑うので皆はもう一度笑うことができた。


「もちろん喜んで。では参りましょう。

みなさん。ここまでありがとうございました」


「よし。我々は戻ろう」


 二手に別れ歩き出す。


「ケネシス様。かえってお手数をおかけして申し訳ありませんわ」


「本当にそうお考えですか?」


 ケネシスはからかうように笑顔で質問した。


「え?」


 意図がわからないアリサは首を傾げる。


「ふふふ。そのようなお姿は珍しいですね。アリサ嬢は大抵のことは理解してしまわれるから」


 アリサは頬を少し染めて俯き気味で歩いている。


「そんなことはございませんけど。確かに今ケネシス様が求めている答えがわかりませんわ」


 ケネシスは優しげに微笑む。


「からかったわけではないのですがアリサ嬢には少々反省していただきたいとは思っております」


「ええ。わかっております。あのような結果を招く対応をしたことは反省しておりますわ」


「ほら、そこが違うのですよ」


 悲しげに俯いていたアリサは頭を上げて首を傾げる。


「危険分子への対応を反省するのではなくお一人で行動され危険分子を引き寄せたことを反省していただきたいのです」


「はあ?」


 アリサは不思議なものを見るように目を瞬かせた。


「つまり……その……ぼ……僕をもっと頼ってほしいのです」


 ケネシスは頬を染め、アリサは『理解した』と顔を明るくした。


「そうですわね。ケネシス様も生徒会のメンバーなのですから頼るべきでしたわ。

次からは先にお声掛けいたしますわね」


 ………………アリサは全く理解していなかった。


「え? あぁ。まぁ……。今はそれでいいですけど」


 一歩止まってからアリサの背中を見て肩をガックリとさせ歩きだすケネシスの声はなぞが解けたつもりでスッキリした気分になっているアリサには届かなかった。


〰️ 〰️ 〰️


「アリサが水たまりに突き飛ばすほどのことをするとは思えませんが?」


 誕生パーティーの席でメイロッテはズバニールの言い分に首を傾げた。


「すべてにおいて証人は腐る程いるっ! 言い逃れするなっ!

とにかくっ! そのようなことを命じるメイロッテとの婚姻などありえない。この場で婚約は破棄だっ!」


「ズバニールさまぁ!! かっこいい!」


 ビシッとメイロッテを指差すズバニールに尚しなだれるパレシャが黄色い声を出しズバニールは鼻の下を伸ばした。


 メイロッテは閉じ扇を顎にチョンと当てて首を傾げる。


「それは不可能かと思いますが」


 二人の世界に浸るズバニールとパレシャはメイロッテの言葉を聞いていなかった。


 そこにヒーローガールが登場し皆の注目を一身に集め皆に安堵を与えた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 頬を染めてるケネシスくん、可愛い。 そしてケネシスくんの気持ちに全く気付いていないアリサちゃん……頑張れ、ケネシスくん。
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